鬼火 第5話
拓哉は綾乃と別れ、一人で工場の敷地を歩いていた。
焼け跡。
配管。
電気設備。
消防設備。
一つひとつを確かめながら、事件当日の痕跡を探していく。
その時だった。
ポケットの携帯電話が震えた。
拓哉は画面を確認する。
「……克己か。」
通話ボタンを押した。
「もしもし。」
電話の向こうから、いつもの軽い口調が聞こえてくる。
「よう、拓哉。」
「今、忙しいか?」
「悪いな。」
拓哉は周囲を見回しながら答えた。
「今は事件の現場だ。」
「不審火を調べてる。」
一瞬、電話の向こうが静かになった。
そして克己が低い声で言った。
「……その現場って、○×工場じゃないか?」
拓哉の足が止まる。
「……どうして知ってる?」
克己はすぐには答えない。
小さく笑う声だけが聞こえた。
「図星か。」
「最近、裏の連中が妙に騒いでいてな。」
「その工場の名前を何度か耳にした。」
拓哉の表情が険しくなる。
「裏の連中?」
「誰のことだ。」
「それは今は言えない。」
克己はあっさりと言った。
「だが、一つだけ忠告しておく。」
「その事件……普通の放火事件じゃない。」
拓哉は黙って耳を傾ける。
克己の声色がさらに真剣になった。
「もし工場の中で、"青い炎"という言葉を聞いたら気を付けろ。」
「それ以上は深入りするな。」
「命を落とすぞ。」
そこで電話は一方的に切れた。
「……青い炎?」
拓哉は携帯電話を見つめたまま呟く。
その時、工場の奥から誰かの悲鳴が聞こえた。
「うわぁぁぁっ!」
拓哉は顔を上げると、反射的に悲鳴のした方向へ走り




