鬼火 第39話
拓哉と綾乃は、茉里からの連絡を受けると急いで○×大学へと向かった。
そして昨夜、自分たちが訪れた旧校舎へ足を踏み入れる。
だが――。
そこにあったはずの機械は跡形もなく消えていた。
いや、機械だけではない。
昨夜見た研究設備や標本棚、資料の類までもがなくなっていた。
広い室内には埃をかぶった机や古い椅子が置かれているだけだった。
まるで最初から誰も使っていなかったかのように。
「……本当にここだったの?」
茉里は腕を組みながら、疑わしそうな目で拓哉を見た。
「俺たちは確かにここへ来たんだ。」
拓哉は険しい表情で答える。
「そして宮前という男と会った。」
「その男から、この事件の原因と思われる機械の話も聞いたんだ。」
綾乃も頷いた。
「私も見ました。」
「間違いありません。」
だが、茉里は納得できない様子だった。
「その宮前って人なんだけど……」
茉里は手にしていた資料へ目を落とした。
「大学側に確認したわ。」
「職員、教授、研究員、警備員、過去の在籍者まで調べてもらった。」
そして首を横に振る。
「でも、宮前という人物は見つからなかったの。」
「そんな……」
綾乃は思わず言葉を失った。
拓哉も信じられないという表情を浮かべる。
「そんな馬鹿な……。」
「俺たちは確かに会ったんだぞ。」
「話もした。」
「それに昨夜、あの機械を止めたのも宮前さんだったじゃないか。」
静まり返った部屋に沈黙が落ちる。
茉里は部屋の奥を見つめながら、小さく呟いた。
「じゃあ、貴方たちは一体……誰と話していたの?」
その言葉に、拓哉と綾乃は顔を見合わせた。
昨夜の出来事は鮮明に覚えている。
宮前という男も。
剛志という青年も。
そして、あの不気味な機械も。
だが、その全てが最初から存在しなかったかのように消えていた。
古びた校舎の窓から吹き込む風が、静かな室内を通り抜ける。
その冷たい風に、綾乃は思わず身震いした。




