鬼火 最終話
拓哉と綾乃はしばらくの間、大学内を捜し回った。
今回の事件に関わっていると思われる機械と、宮前という男の行方を追ったのだ。
だが――。
二人がどれだけ探しても、その姿を見つけることはできなかった。
結局、有力な証拠は何一つ発見されず、事件の調査はそこで打ち切りとなった。
茉里が率いてきた科学警察研究所の調査チームも、首を傾げながら大学を後にしていった。
「どういうことだ……」
拓哉は大学の駐車場へ向かいながら、ぼやいた。
「確かにあそこに機械はあったんだ……」
その横を歩いていた綾乃が苦笑しながら言った。
「まるで狐に化かされたみたいですね」
「ああ……本当にな」
拓哉は小さく頷いた。
そして、隣を歩く綾乃の横顔を見た。
あの夜、電気室で危険な目に遭った綾乃。
だが今はこうして無事に歩いている。
それだけで十分だった。
拓哉は誰にも気付かれないように、そっと胸を撫で下ろした。
その頃――。
大学の駐車場の片隅。
一台の黒塗りのハイヤーが静かに停まっていた。
後部座席には、白髪の老紳士が一人座っていた。
老紳士は遠ざかっていく拓哉と綾乃の姿を無言で見つめていた。
やがて、その視線を助手席へ向ける。
そこには古びた写真が一枚置かれていた。
写真には数人の若者たちと、一台の巨大なコンピューター。
そして、その中央には――
宮前と名乗った男によく似た青年の姿が写っていた。
老紳士は静かに微笑む。
「……ようやく、終わったか」
そう呟くと、ハイヤーはゆっくりと走り出した。
夕暮れの大学を後にしながら――。
【鬼火 完】




