鬼火 第24話
宮前は静かに機械を見つめながら、重い口を開いた。
「もともと、この装置は旧校舎の研究施設を管理し、守るために、当時の学生たちが共同で
開発したホストコンピューターでした。」
拓哉と綾乃は黙って耳を傾ける。
「あの頃、この大学では周辺の自然環境や、絶滅寸前の動植物を保護・研究していたのです。」
宮前はガラスケースに並ぶ標本へ視線を向けた。
「ところが、ある日……。」
部屋の空気が一段と重くなる。
「一人の学生が、あの工場の建設予定地で貴重な植物を採集していた際、事故に巻き込まれて
命を落としました。」
綾乃は思わず息をのむ。
「あの工場が建つ前のことですか?」
「ええ。」
宮前は小さくうなずいた。
「工場の建設が始まり、自然は急速に失われました。そして、その学生が亡くなって間もなく……
この機械に異変が起き始めたのです。」
「異変?」
拓哉が眉をひそめる。
「誰も触れていないのに起動する。夜中に勝手に電源が入り、記録されていない音声が流れる。
まるで……。」
宮前は言葉を飲み込んだ。
「まるで、誰かが機械の中にいるようだったのです。」
部屋は静まり返る。
機械だけが、低いうなり声を上げ続けていた。
「もちろん、最初は故障だと思いました。」
宮前は苦笑する。
「だから、この装置を開発した学生たちは修理しようとしました。」
その表情が、ゆっくりと曇る。
「ですが、そのたびに事故が起きたのです。」
「事故……?」
「感電事故、転落事故、原因不明の火災……。」
宮前の声が震える。
「修理に関わった学生たちは、一人、また一人と命を落としていきました。」
綾乃は思わず装置へ目を向けた。
青白いランプが、不気味な鼓動のように点滅している。
宮前はその光を見つめたまま、小さくつぶやく。
「いつしか大学では、誰もこの部屋へ近寄らなくなりました。」
「『あの機械には、亡くなった学生の魂が宿っている』――そんな噂まで立つようになったのです。」
その瞬間。
ピッ……。
誰も触れていないはずの装置が、小さな電子音を鳴らした。
三人は同時に息をのみ、ゆっくりと機械へ視線を向けた。




