鬼火 第23話
「大丈夫ですか?」
拓哉は床に横たわる宮前の肩を支えながら声をかけた。
宮前は苦しそうに息をつき、痺れの残る腕を押さえながらゆっくりと身を起こす。
「機械は……止まりましたか?」
その声は震えていた。
拓哉は部屋の中央へ視線を向ける。
薄暗い部屋の中で、奇妙な装置はなおも低いうなり声を上げ、青白いランプを脈打つように
点滅させている。
「いや……まだ動いている。」
その光は、まるで生き物の鼓動のようだった。
綾乃も思わず息をのむ。
「さっきから、あの音……聞こえませんか?」
耳を澄ますと、機械の駆動音に混じって、誰かが遠くで囁いているような声が聞こえる。
風の音にも聞こえる。
泣き声にも聞こえる。
しかし、何を言っているのかまでは分からない。
「気のせい……ですよね?」
綾乃が不安そうにつぶやく。
宮前は青ざめた顔で首を横に振った。
「……いいえ。」
その一言に、部屋の空気がさらに冷たく感じられた。
宮前は装置を見つめたまま、小さくつぶやく。
「やはり……止められませんでしたか。」
拓哉は宮前を見据えた。
「あの機械は一体何なんだ?」
しばらく沈黙が続いた。
やがて宮前は覚悟を決めたように口を開く。
「あれは、もともとこの旧校舎を管理するホストコンピューターでした。」
宮前はそこで一度言葉を切る。
機械の方を見つめるその目には、恐怖の色が浮かんでいた。
「ですが……あれはもう、私たちが造った機械ではありません。」
「どういう意味だ?」
拓哉が問い返す。
宮前はゆっくりと息を吸い込み、静かに言った。
「三年前、この建物で実験中に事故が起きました。」
「その日を境に、あの機械は……夜になると、誰も入力していないはずの声を話し始めたのです。」
その瞬間――
ザザッ……。
誰も触れていないはずのスピーカーから、再びノイズが流れた。
そして、小さく。
まるで誰かが笑ったような声が聞こえた。




