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鬼火 第20話

『一体、ここは何なんだ……?』


 拓哉は周囲を警戒しながら、綾乃とともに旧校舎の奥へと足を進めた。


 建物の中は異様なほど静まり返っている。


 人の気配はない。


 聞こえるのは、自分たちの足音だけだった。


 その静けさが、かえって不気味さを際立たせていた。


 廊下の両脇には、絶滅した昆虫や植物の標本、古い研究資料が整然と並んでいる。


 どれも丁寧に管理されており、この建物が今も誰かに使われていることを物語っていた。


「誰かが……ここで研究を続けている。」


 綾乃が小さくつぶやく。


 拓哉は黙ったまま頷き、さらに奥の部屋へ入った。


 その瞬間、二人は思わず足を止めた。


 古びた校舎にはまったく似つかわしくない、銀色の大型装置が部屋の中央に据え付けられていた。


 無数のケーブルが壁を伝い、装置の先端は窓越しに、例の工場の方向へ向けられている。


「これは……。」


 拓哉はゆっくりと装置へ歩み寄る。


 工場で起きた不可解な発火現象。


 もし、この装置が関係しているとしたら――。


「近付いて確かめてみるか。」


 拓哉が手を伸ばしかけた、その時だった。


「その機械には、触れないでください。」


 突然、静まり返った部屋に低い男の声が響いた。


 二人ははっとして振り返る。


 部屋の入口には、一人の中年男性が静かに立っていた。


 昨日、自分たちに工場のことを語った男――。


 宮前だった。


「……やはり、あなたはいたんですね。」


 綾乃が驚きを隠せずにつぶやく。


 宮前は静かに二人を見つめると、どこか寂しげな笑みを浮かべた。


「ええ。私は逃げも隠れもしていません。ただ――皆さんが、私を"教授"だと

 思い込んでいただけです。」

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