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鬼火 第19話

 拓哉と綾乃は、男子学生の言葉が信じられなかった。


 昨日、確かに二人は宮前という男と話をしている。


 それなのに、この大学にはそんな教授はいないという。


 半信半疑のまま、二人は大学の事務室を訪ねた。


「すみません。宮前という教授について、お聞きしたいのですが……」


 受付の女性職員は名簿を確認すると、不思議そうに首を振った。


「申し訳ありません。その名前の教授は、この大学には在籍しておりません。」


「そんなはずは……」


 綾乃が思わず顔を見合わせると、職員は何かを思い出したように声を上げた。


「あっ……でも、宮前という名前なら聞いたことがあります。」


 拓哉が身を乗り出す。


「どこにいるんです?」


「教授ではありません。旧校舎を管理している管理人さんが、たしか宮前さんだったと思います。」


「管理人……?」


 拓哉と綾乃は再び顔を見合わせた。


 昨日、自分たちが話した男は、教授ではなく管理人だったというのか。


 疑問は深まるばかりだった。


 とりあえず二人は職員から旧校舎の場所を教えてもらい、足を向けることにした。


 そこは前回、綾乃が気になっていた大学の片隅に建つ、古びた建物だった。


 蔦が外壁を覆い、窓ガラスの一部はひび割れ、長い年月を感じさせる。


「ここか……」


 拓哉は静かに扉を開いた。


 中は薄暗く、ほこりの匂いが漂っている。


 だが、人の気配は確かにあった。


 机の上には最近まで使われていたと思われる研究ノート。


 棚には整然と並べられた薬品の瓶。


 そしてガラスケースの中には――。


「これって……」


 綾乃は思わず息をのんだ。


 ケースの中には、日本ではすでに絶滅したとされる昆虫や植物、小動物の標本が

 保存液に浸されたまま大切に保管されていた。


「誰かが……今もここで研究を続けているのか?」


 拓哉は標本を見つめながら、静かにつぶやいた。


 その時――。


 二人は建物の奥から、かすかに何かが動く物音を聞いた。

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