鬼火 第17話
翌朝――。
不審火が相次いでいた○×工場は、一転して殺人事件の現場となっていた。
規制線が張られ、多くの捜査員や鑑識が慌ただしく現場を行き交う。
工場の一角には、黒く焼け焦げた工場オーナー・福夫の遺体が静かに横たえられていた。
拓哉、綾乃、そして科学警察研究所の茉里は、ほかの捜査員から少し離れた場所で
現場を見つめていた。
拓哉は苦々しい表情で口を開く。
「……やはり、お前たちの仮説は正しかったようだな。」
視線は黒焦げの遺体から離れない。
「この焼け方は、普通の火災じゃ説明がつかない。」
茉里も静かに頷く。
「ええ。」
「まだ断定はできないけれど、高周波、あるいはそれに近いエネルギーが作用した可能性は
高いと思う。」
「しかも、そのエネルギーを状況に応じて制御できると考えなければ、この現象は説明できないわ。」
拓哉は腕を組んだ。
「そんなものが本当に存在するのか……。」
茉里は小さく首を振る。
「少なくとも、私の知る限りでは存在しない。」
「だからこそ厄介なの。」
綾乃は現場をゆっくり見回した。
焦げ跡。
焼けた資材。
規制線。
そして、工場の建物。
「でも……。」
綾乃は静かに呟く。
「どんな技術にも痕跡は残るはずです。」
「使われたなら、どこかに必ず。」
そう言うと、綾乃は地面や周囲の設備を注意深く観察し始めた。
目には見えない"何か"が、この現場に残されている。
そんな予感がしていた。




