鬼火 第16話
その日の夜――。
不審火が相次ぐ○×工場では、工場のオーナー・福夫が一人、懐中電灯を片手に構内を見回っていた。
「今夜こそ捕まえてやる……。」
警察に任せきりでは埒が明かない。
そう考えた福夫は、自ら犯人を見つけようとしていた。
夜の工場は、不気味なほど静かだった。
機械は止まり、人の気配もない。
聞こえるのは、自分の足音だけ。
その時だった。
――バチッ。
小さな放電音のような音が、どこからともなく聞こえた。
福夫は立ち止まる。
「……何だ?」
耳を澄ます。
再び、
バチ……バチッ……。
今度は、さっきよりも近い。
「どこか漏電でもしているのか?」
福夫は懐中電灯を握り直し、音のする方へ光を向けた。
だが、何もない。
次の瞬間。
工場の照明が一瞬だけ明滅した。
パッ――。
そして再び闇が戻る。
福夫の背筋に冷たいものが走る。
「何なんだ……。」
恐る恐る懐中電灯を上へ向ける。
その光の先で――。
青白い炎のようなものが、夜空を蛇のようにゆっくりとうねっていた。
「な……何だ、あれは……。」
炎とも、稲妻とも違う。
青白い光は音もなく漂い、まるで生き物のように形を変えていく。
福夫は思わず一歩後ずさる。
その瞬間だった。
バチッ!
激しい放電音が夜の工場に響いた。
「うわっ!」
福夫が叫ぶ間もなく、その身体が青白い光に包まれる。
そして――。
ボッ!
全身が一瞬で炎に包まれた。
「ぐあああああっ!」
夜の工場に、絶叫だけが響き渡る。
だが、その声も長くは続かなかった。
再び静寂が訪れる。
青白い炎は、何事もなかったかのように闇の中へ消えていった。




