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鬼火 第12話

 前回、不審火が相次ぐ工場を調べた際、拓哉は現場ばかりに気を取られ、

 周辺施設まで確認していなかった。


 警視庁へ戻った後、改めて工場周辺の地図を見直していた拓哉は、一つの施設に目を留める。


 工場のすぐ近くに、一つの大学があった。


「……こんな近くに大学があったのか。」


 拓哉は小さく呟く。


「何か気になるんですか?」


 綾乃が尋ねると、拓哉は地図から目を離さず答えた。


「事件と関係があるとは限らない。でも、現場だけ調べても何も出なかった。」


「だったら周囲も調べるべきだ。」


「何か見落としているかもしれない。」


「行ってみるぞ。」


「はい!」


 二人は工場の近くにある大学へ向かった。


 大学は緑に囲まれた、ごく普通のキャンパスだった。


 学生たちは講義へ向かい、穏やかな空気が流れている。


 しかし一つだけ特徴があった。


 この大学では、環境保全や自然生態系、さらには絶滅危惧種の保護などを専門に研究しているのだ。


 拓哉はキャンパスを見回しながら、小さく呟いた。


「環境研究か……。」


 綾乃も周囲を見渡す。


「工場とは、あまり関係がなさそうですね。」


「そう思わせる場所ほど、意外な手掛かりが眠っていることもある。」


 拓哉はそう言うと、ちょうど研究棟から出てきた白衣姿の男性に歩み寄った。


「あの、少しお話を伺いたいのですが。」


 男性は立ち止まり、穏やかな表情で二人を見た。


「私ですか?」


 拓哉は警察手帳を提示する。


「警視庁です。」


「この近くの工場で続いている不可解な火災について、何かご存じのことはありませんか?」


 白衣の男性――宮前教授の表情が、一瞬だけ曇った。

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