鬼火 第11話
『……もしかしたら。』
拓哉の頭の中で、これまでの情報が一つにつながり始めていた。
工場。
焼け跡。
原因不明の発火。
そして、綾乃と茉里が示した高周波という仮説。
拓哉はゆっくりと口を開く。
「もし本当に高周波が原因だとしたら……。」
綾乃と茉里が顔を上げる。
「家庭用電子レンジとは比較にならないほどの、桁違いの出力が一点に集中した可能性がある。」
茉里は静かに頷いた。
「理論上は否定できないわ。」
「でも、それほどのエネルギーを発生させる装置なんて、少なくとも私は聞いたことがない。」
そう言いながら、机の上に広げられた鑑識資料へ目を落とす。
「そして何より、それを裏付ける証拠がまだない。」
綾乃も小さく息をついた。
「結局、今は全部仮説なんですね……。」
部屋に沈黙が流れる。
やがて拓哉は事件ファイルを閉じ、立ち上がった。
「だったら探すしかない。」
「仮説は証拠にならない。」
「証拠を見つけて初めて、仮説は真実になる。」
その言葉に、綾乃も力強く頷く。
「はい!」
茉里は二人を見送りながら言った。
「私は研究所でもう一度データを洗い直してみる。」
「何かわかったら、すぐ連絡するわ。」
「ああ、頼む。」
拓哉は軽く手を挙げると、綾乃とともに部屋を飛び出した。
二人が向かう先は、再び"鬼火"が現れた工場。
見落としている何かが、必ずそこに残されている。
拓哉はそう確信していた。




