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02_ステラ

「どれも美味しいの!

こんなに美味しい料理、久しぶりなの。」

ステラちゃんがニッコニコで語る。

やはりヒトの料理を気に入っているらしい。

食べ方も、フォークとスプーンで綺麗に食事している。


ちなみに、服がボロボロだったため、食事前にナルちゃん用に買った服に着替えてもらっている。

着替えた姿を改めて見直すと……、やはり可愛い。

クリッとした瞳、白い肌、鼻筋の通った顔立ち、青掛かった肩まで伸びるストレートヘア。

頭の両脇にちょこんと飛び出た角さえ無ければ、外見は本当にただの女の子だ。


そんなステラちゃんがこれまで、「魔獣の森」でどうやって過ごしていたのか気になり質問してみた。


「これまでは何を食べてたんです?」

「え〜っと、この姿だと襲ってくる魔物がいるの。

それを倒して逆に食べちゃってたの。」


……あ〜、ボクら人族みたいに魔力に無頓着な魔物も居るのだろう。

それが襲い掛かって返り討ちに遭ったのか。


「……そんなの食べて、お腹壊さなかったですか?」

「大丈夫なの!

竜に毒は効かないの!」


あ〜あ……、薄々分かっていたけど、しっかり「竜」って言っちゃったよ、この子。


「……でも、魔物をかじるより、ヒトが作った料理の方が全然美味しいの!

えへへ、怖かったけど声を掛けて良かったの。」

「あれ?

魔物相手は平気なのに、ヒトは怖いんですか?」

「うん。

お母様が、外のヒトは私達を食べようとするから、近付いちゃダメって言ってたの。」


ヒトが竜を?

そんな事あり得るのだろうか?

ボクはこの中で一番物知りなヴェロニカさんに聞いてみた。


「ヴェロニカさーん!

ヒトが竜を食べる事なんてあるんですか?」

「ワ、ワタシに話を振るなっ?!

……そもそも、竜の全身は余さず我々ヒトにとっては猛毒と言われている。

毒抜きする方法も、世界の何処かには有るかも知れないが、少なくともワタシは知らんっ!

ただ、食べたりはされないが、竜の素材はどこを取っても超々レアな最高級品だ。

そういった目的で狙われる事はあり得る。」


「……ひっ!」

ヒトに狙われる事があり得る、その事実を聞いたステラちゃんが短い悲鳴を上げた。


それに気付いているのかいないのか、ヴェロニカさんが話を続ける。

「……後は、魔物同士では、戦って倒した相手を食べるという事はあるそうだ。

主に相手の魔力核を食べる事で、魔力や強さを取り込もうとするのだと。

ヒトの民間療法でも、強い生き物の血肉が食べられる事があるな。

その辺がゴッチャになってるか、または、単純に外へ行かない様にと、戒めとして語ったのじゃないかな?」


「「へぇ〜〜……。」」

ボク、リック、ステラちゃんは声を揃えて感心してしまった。

やっぱり困ったらヴェロニカさんに聞けば外れないなぁ。


「……でも、そこまで「外に出るな」と言われていたのに、なんで迷子になっちゃったんすか?」

「あのね、お母様が居ない時に変なオジチャンが家に入って来たの。

それでヒトに「逃げて」って言われて逃げたんだけど、家に帰る方向が分からなくなっちゃったの。」


「……うん?

それはどういう風に変なオジチャンだったのです?」

「うんとね〜……、なんか、嫁がどうとか言って暴れてたの。」


嫁?ステラちゃんのお母さんの事だろうか?

そのヒト……、いや竜が居なかったから暴れた?

……そう言えば、ステラちゃんはお父さんの事は口にしないなぁ。


「ん〜……?

まぁ、理不尽に暴れる奴はどの種族でもいるものですか……。」


ほどが感想を漏らすと、何かに気付いたリックが胸の前で手を上げた。


「あの、話から察するに、ステラちゃんが住んでたのは、帝都の北の「竜の森」っすよね?

そこからここまで一人で来たんすか?!

いったいどれだけ掛かったんすか?」

「え〜っと〜……、ステラが家から逃げたのが、ようやく雪が降らなくなった頃なの。」


この辺で雪が降らなくなるのは春頃だ。

「竜の森」はもっと北の筈だから、少し遅いかも知れない。


「……じゃあ、半年くらい一人で森の中を彷徨ってたんすか?!」

「……?」

ステラちゃんの話にリックは驚いているけど、当のステラちゃんは、リックが何を驚いているのか分からない様子だ。

その辺、長命種の竜と人族の時間感覚の違いが出ている気がする。


「はいっ!!気付いたんですが!」

「はい、フラウノさん、なんでしょう?」

これまで遠巻きに見ていたフラウノさんから手が挙がった。


「帝都で聞いた、北の町の魔物騒ぎってそれが原因じゃないですかね?

この子の親竜がこの子を探し回ったせいで、魔物が驚いて逃げ出したとか。

それによって逃げた先の魔物も玉突きの様に逃げ出して、北の町に流出したのでは。

春先なら時期はピッタリ合います。」


「「──っ!!」」

フラウノさんの推測を聞いて、皆が驚く。

言われてみればタイミングがピッタリ合う。

多分、それが真相なんだろう。


「なるほど、理屈は通りますね。

次にアリアさんと会ったら、エマオさんに伝えてもらいましょう。

……まぁ、原因が分かったところで問題解決には繋がらなさそうですが、原因不明というより幾分マシでしょうから。」


そして、エマオさんからなら帝都へ情報を届ける事も出来るだろう。

軍経由で伝えてもらっても良いだろうしね。


「え〜っと、それで……、この子どうするんです?

まさか「竜の森」まで行くとか言いませんよね?」

「そうですね。

それは流石に無いです。」

セレナさんが話を本筋に戻したのを受けて、ボクは答えた。


流石にここからベルモンドに戻り、帝都に戻り、更に北へ……、と行く気にはならない。

アリアさんとの約束もあるし。


ボクはステラちゃんに向き直り話し掛ける。

「ステラちゃん、帰る方向は教えられますが、一人で帰れます?」

「……難しい、かもなの。」


だろうねぇ……。

「竜の森」を彷徨い歩いて、「魔獣の森」まで来る程だ、方向感覚は自分でも信用出来ないのだろう。


「ボクらはこの先の人里に行くんです。

そこでお母さんが探しに来るまで待っているという案もありますけど?」

「うん、行くの!

また一人になるのは寂しいの!」

ボクの提案に、ステラちゃんは躊躇なく乗っかって来た。


(おいぃぃぃぃぃっ!!!!)


……ヴェロニカさん、ちゃんと「共鳴の指輪」外してるのかな?

バンバン波動が伝わってくるんだけど。


「でも、人里だと竜である事を隠さなくてはいけませんよ。

おまけにヒトの中で生活するには、ヒトのルールを守ってもらう事になります。

守れますか?」

「うん、守るの!

クローの言う事を聞けば良い?」

「はい、ボクが分かることなら、ボクで教えてあげます。

でも、ボクも全知全能じゃないですから、分からない事もありますからね。」

「うん、分かったの!」


ステラちゃんの様子からは、絶対的強者である竜として振る舞う感じは一切感じられない。

これなら、話し合いながら旅を共にすることも可能だと思えた。


「じゃあ、一緒に行きましょうか。

取り敢えず、今日はもう遅いからお休みしましょうね。」

「うん!」

ボクの言葉に満面の笑みで応えるステラちゃんは、本当にただの可愛いらしい幼女にしか見えなかった。


**********


ステラちゃんと一緒に、リック、ティアナさん、フラウノさん、ナルちゃんを先に寝かせ、残った半数で見張りを行う事にした。


そこで、ヴェロニカさんがステラちゃんについて切り出してきた。

「……で、どうするんだ、アレ?」

「どうも何も、聞いての通り連れて行きますよ?」


先程の会話から、「やっぱり無理」と言うなんて可哀想過ぎる。


「あのなぁ……、竜と問題なんか起こしたら、それこそ下手をしたら国一つ滅びてもおかしくないんだぞ?!」

「そうは言いますが、あんな小さな子を一人残して行けないでしょう?」

「それはそうですが、危険過ぎませんか?

あの子に悪気が無くとも、ちょっとした失敗でヒトの命が吹き飛ぶのですよ?」

ヴェロニカさんに続いてセレナさんも懸念を口にする。


「それはそうなんですが、だったらちゃんと教えてあげれば良いだけだと思うんです。

ステラちゃん、ボクと会話していて返答こそ幼い感じでしたが、ボクの言葉が解らない様なそぶりは無かったんですよね。

ヒトが使う共通言語はほぼ完璧に理解してるんですよ。

だから、話が通じない事は無いと思います。

何より、やろうと思えば初手で問答無用で襲い掛かる事も出来たのに、そうはせずにボクらと意思疎通しようとしてくれたんですよ?

余程一人で寂しかったんだと思うと、とても突き放す気にはなれません。」


「……。」

一人で寂しかった、という言葉に思うところがあったのか、ヴェロニカさんはそれ以上は反対の言葉を口にしなかった。


「……相変わらずですね、クロー君は。

でもまぁ、クロー君が同情してしまう気持ちも分からないでもないです。」

セレナさんは苦笑するように呟いて受け入れてくれた。


「そういう所がズレてると言うニャ。」

スノウノさんは先程のティアナさんの台詞を引用してツッコんできた。

けれど、反対といった雰囲気ではない。


「しょうがないな、ちゃんと面倒を見るんだぞ?」

最後に締める様にヴェロニカさん言った。

うん、なんかそれじゃあ、ペットか何かを飼う時みたいな言い回しっぽくないですかね?


兎も角こうして、ウチのパーティは幼竜のステラちゃんを受け入れることになったのだった。

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