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【27話】コンテニュー

 今までの出来事が走馬灯のように駆け巡る、短いながらも色々と経験してきた、せっかくの異世界転生だっていうのに、としみじみとしていると。

「いつまで寝てんだよ」

 声がする方を見ると、血色の悪い顔をした男が立っていた、この表現は間違っているかもしれない、緑色をそのまま塗ったようなまさにオークのようで。

「え、何でオークがこんな所に……え? もしかしてリクトなのか?」

 失礼だと感じながらも声に出し驚く、リクトは呆れた反応になる。

「お前もだよ」

 と自身の頭を指でつつく。

 しばらく固まり、自分の両手をまじまじと見つめて絶叫する。

「え、俺? え!? 何でオークなんかに」

 ため息と舌打ちが飛んでくる、そして剣を抜き俺へと向ける。

「くどい、二度目なんだわァ、オレ達がオークだとかどうでもいいだろ? さっさとヤリあおうぜ」

 そう言ってリクトは斬りかかって来る、一切の猶予も許されない気がした。

「おい、ふざけ……」

 咄嗟に腕を構え防御の姿勢を取る、無理だ、剣なんて使える訳が無い。

 明らかに俺が剣を使えないと分かっているのに、容赦なくリクトは俺の腕を斬りつけた。

 刃が食い込んで来る、痛い、血が流れ落ち、垂れ、より痛みを強く感じさせた。

「っ……お前本当に斬りやがって」

 今、互いにいる場所が暗闇に包まれていて、現実にいるとは思えないのに、痛覚があって血も流れる、やたらリアルだった、夢なら覚めてほしいが。

 リクトは一旦距離を取り、指先をクイッと曲げる動作を繰り返し、挑発をしてくる。

「ギヒヒ、誰が勝てる勝負捨てるんだって話なんだわァ、猿真似で適当に剣を振るか、大人しくオレに殺されるか選べ」

 酷いやつだ、散々色々されたというのに強要してくるなんて、だが諦める訳にはいかない、黙って好き勝手に殺されるなんて嫌だ、それに俺は謝らないといけない。

「うぉぉぉぉぉぉ」

 勢いのまま声を出し、体を前進させる、拳を握りリクトをまたぶん殴ろうとしたが、いとも容易く避けられる。

 息を切らしながら向き合い、リクトに叫ぶ。

「俺は謝らないといけないんだ、そりゃ納得なんかしていないさ、お前がやった事の尻拭いなんだから、でもお前みたいなやつにまたあんな事をされるくらいなら――俺がこの体を使う」

 リクトはそれを聞き、顔が引きつり笑い出す。

「ハハ……こいつ言いやがった……宿主を乗っ取ると、まさに寄生虫らしいなァ!」

 そしてまた剣を向けてくる、だったら見せてやるよ、お前の言う通り出来の悪い猿真似を。

 剣を取り出し防御をして攻撃を防ぐ、体全身に金属音が響き渡る、鉄の重み命の重み、これが剣を持つという事なのだろうか。

 どうやら予想外の行動らしく、リクトは焦り出す。

「謝るだとか笑わせんなよ、オークが好かれる訳が無いだろうが、ただのR18おまけルートの、ただのオークがごときが、有り得ねェんだよ」

 その声には色々な感情が詰まっていた、焦り怒り苦痛……全て負の感情だけだ。

「ふざけるなよ、オレは何周もさせられてるっていうのにお前はたった一回だけ、たったの一回だけで、何故なんだ何が違うというんだ」

 言っている事は全く分からなかった、それでも何故か可哀想だと思った、同情しそうになった。

「オレは間違っていない頑張ったさ、頑張らせられたんだよ、ずっと操り人形だ、なのに同じ展開の繰り返しで進めなくて先の事なんて分からなくて」

 段々とリクトの声にも剣を振る力も弱くなっていく、きっとこれが本音だろうか。

「だからオレがこうなっちまったのも仕方ねェ事なんだわァ、初めてここまで来れたんだ、だからどんな手を使っても仕方ねェよなァ?」

 俺は戦いに慣れて無さすぎた、剣で防ぐ事に集中し過ぎていたんだ、上からの攻撃に必死で下からの攻撃に対処出来なかった。

 リクトが猛攻を一瞬やめた後、腹を思い切り蹴り上げられる、必死に握っていたはずの剣が滑り落ち、地に膝を着く。

 立ち上がらないと剣を拾わないと、必死に考える事は出来たのに、一切の妥協も無く再び腹を蹴り飛ばされ、仰向けに地面に転がり腹を押さえる。

「これで今度こそお前は終わりなんだよ! 死んでくれよ代わりに、これでオレはやっと先へ……」

 そしてリクトは馬乗りになり剣を上に構える、そして俺の心臓へと剣は振り下ろされる。

 白い光が見える、また走馬灯かと思われていたそれは、羽が生えていて唐突に裂ける、まるで口のようになり、ニヤついているようにも見えた。

「バン!」

 その声は善悪を知らない子どもの無邪気で残酷なようにも聞こえ、その音はあまりにも残酷で平等に命を奪う音をしていた。

 リクトの右腕が吹き飛ぶ、右半身がまるで消しゴムで無理やり削り取られたかのような歪な形になる。

「アハハハハハ! 確かにこいつはいいや、勝ち誇った顔が一瞬にして崩さる瞬間! たまらないね」

 どこかで聞いた事があるような声が響き渡る。

 静寂が広がっていく、仕方がない事だ、俺もリクトもこうなるとは予想がつくはずがないのだから。

「あーァ……ツイてねェわ、もう少しでオレは先へ進めたってのによ」

 奇跡的にリクトは生きてこそはいたが、まさに虫の息のようで、いつ、その命が燃え尽きてもおかしくなかった。

 球体は弾むようにリクトに近づき、やけに上機嫌な声で話しかける。

「教えてあげよっか? 僕は唯一知っているよ、お前のルートのエンドを、何せ無理やり見せられたんだからね」

 リクトはその話に食いつきこそはしたが、言葉を交わす事は二(・)度(・)と(・)無く、球体の方に顔を向けた。

 球体は、フラつくリクトの目線に合うように位置を調整してから

「よく見てなよ、これがお前の目指した理想、お前のトゥルーだよ」

 そう言って球体は再び裂けたかと思うと中から現れたのは――無慈悲な銃口、再び破裂音が聞こえ、リクトの首が無くなった体は力無く崩れ、まるで血が流れるように黒いモザイクのようなものが、止まることなく流れ続け点滅していた。

 何も反応が出来なかった、悲しむ事も喜ぶ事も無く、ただリクトの体が消滅していくのを黙って見ていた。

 悪いやつなのは確かだ、暴力は振るうし口も悪い、それでも悲しいやつだった、そう思うと虚しい気持ちでいっぱいになった。

 球体が呆れた声を出しながら近付いてくる。

「何で、そんな奴にさえ同情するんだよ君は」

 俺もリクトと同じように殺されるんだと覚悟をした。

「あぁ、安心しなよ君は殺さないから」

 思わず顔が歪める、この球体は心が読めるのか、よく見ると羽が高速で動いていて、まるでむ……いや、やめておこう、これ以上何か言ったり思ったりすると嫌な予感がする。

 俺が起き上がり地面に座ると、心なしか球体は嬉しそうに見えた、そして咳払いをすると、スポットライトのように球体に光が掛かる。

「――僕は神だ、今から君に与えるのは三つの選択肢

 一、都合が悪い事は初めから全て無かったことに、犯した過ちも罪の自責も全部無かった事にしてまた君はいつも通りに戻れるよ、つまり途中セーブさ。

 ニ、いっそ最初から全てをリセット、記憶を保持してまた最初から遊べるよ、まあダレかさんみたいになるからこれはおすすめしないかな。

 三、いっそ罪を受け入れる、理由がどうであれ自分がした事だと受け入れ苦しみ続ける、ってこんな変な事するやつなんていないよね。」

 言い終えると、神は振り子のように揺れ、俺の返答を待っていた。

 わざわざ他の選択肢を与えてくれたが、答えは決まっている。

「三だ」

 神の方を見ながら、一切の迷い無く答える。

 俺の返答を聞き、神は驚いた声を出す。

「え、即答だね、いいのかい? 君のした事じゃないのに周囲も君の記憶も塗り替えられるんだよ、全て君自身がやった事になってしまうんだよ」

 やっぱり納得はしない、やっていない事だから、でもそれで責任から逃げるのは嫌だと思った。

 リクトと同じになるのは嫌だった、それにこの体が最初から俺のじゃないとしても、俺なりに生きたいと思っただけだ。

 神は縦に横に回転し、嬉しそうに回った後に俺に言う。

「じゃあ目を閉じて、君が刺されてアイツが無理やり出てこようとしたせいで、記憶が抜け落ちているからそれの修復をしないとね」

 目を閉じると一瞬で意識が遠くなって行く、疲れていたのだろうか、それともこれも神の力だというのだろうか、分からなかったが声は頭に響き続けた。

「あいつとのやり取りも、今のやり取りも全て消える……そして僕とはもう会えないかもしれない」

 少しだけ寂しさを含んだ声だった。

 更に意識は遠くなり、自身の体が立っているのか座っているのか寝転がっているのか、そんな感覚さえも無くなっていく。

 そんな中で思い出したかのように、神の嬉しそうな声が最後に聞こえて来た。

「あぁそうだ、君が助けた女の子は立派な医者になって、今も多くの人の命を救ってるよ」

 何の事だかさっぱりだ、俺が人助けなんて、それなのに凄く嬉しかった、報われたような気がしたのは俺の気のせいだろうか。

 そして何もかもが全て無くなる、一度無になり段々と思い出してくる、どうしてこんなに大切な事を今まで忘れていたのだろうか。

 俺の名前は――クオ、なんの力もチートも無い、ただのオーク、ただの魔物、それでも大切な人達が待っている、待ってくれているんだ、そして光に包まれる。

――見慣れた天井が視界に広がる、やっと帰って来れたんだ、さぁ皆に会って謝りに行くんだ。

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