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歪む眠り

カプセル型のベッドに沈んでいた。

僕は眠っていたのか、それとも未来のどこかにいたのか。境界は曖昧で、まるで時間そのものが凍りかけた水溜まりのようにひび割れている。

まぶたの裏で、幾つもの“あり得たかもしれない未来”が、今でも燃えていた。

仲間を庇って撃たれた未来。逃げ遅れた子どもを救えなかった未来。誰にも名前を呼ばれず、戦死扱いのまま記録から漏れた未来。

全部、僕が選ばなかった――否、選べなかった未来。


なのに、どうしてこんなに痛い。


断ち切ったはずの糸が、また繋がろうと軋みながら鳴いている。

それは血のように熱く、それでいて、自分がひとつひとつ壊してきたはずの命の残像だ。

“僕が生き残るために、切り捨てた無数の命”。

誰にも言えない。誰にも共感なんてされない。


──それでも選ぶしかなかった。


そのときだった。

高周波の警報音が、微睡みを切り裂いた。


「警告。エンジン・コアに微弱な位相ゆらぎ。情報次元干渉を検知」


コアモニターの電子音が、どこか遠くで響いた。

ノイズが走る。視界の端がネオン色の染みで滲み、天井が罅割れたように歪む。

目を開けた瞬間、世界が“別のもの”に変わっていた。


リリアの声が、医務室に駆け込んでくる。


「アレス、起きて! 誰かが……揺らぎを送り込んできてる!」


僕は身体を起こした。汗が、額から、首筋へ流れていく。

喉の奥に、鉄のような苦味が広がった。


「……選ばなかったはずの未来が……這い寄ってくる……っ」


たしかに感じた。

これは、僕自身の“予見”ではない。

どこか外部から、“確率”そのものをねじ込まれるような感触だった。


通常の情報干渉では起きない波形――

ましてや“未観測”のはずの確率が、僕の内部にまで入り込むなんて。

あり得ない。いや、本来は。


でも、これは確かに“誰かの意志”だ。


──何かが、こちらを見ている。


名もなき未来の揺らぎが、僕の内側にまで浸食している。


ただの悪夢じゃない。

でも、どこへ訴えればいい? 誰が、これを理解してくれる?


誰にも分からない。

僕が“何を見ているのか”なんて。

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