敵意
「……ほぉ、これがそうか」
向けられたそれに、レオンとシェリーが咄嗟に守る態勢に入った。
顔布で見えない。しかし……わかる。
(……なんだ?味方じゃねぇのか……?)
明らかに、空気が変わった。
「……あぁ、例の小僧か」
「忌々しい……」
レオンはその時、初めて本当の意味で『神使』を理解した。
それはおそらくシェリーも同様。何も感じていないのはジェイデンくらいではなかろうか。
「ちょ、ハクレン様…っ!」
レオンは、小声で助けを求めた。
「ん~?何ぃ~~?」
「どうゆうことです、これ?」
「どうゆうってぇ~~?」
「なんでこんな敵意向けられてるんですか?」
向けられたそれに、それ以外の名は付けられない。
焦るレオンに対し、白連はいつも通り飄々と軽い。
「そりゃあ、敵やからやろぉ」
「はい!?」
あっけらかんと、そう断言した。空気のように軽く、隕石のように重い。
「きみ、何アホなこと言ってんの?」とでも言いたげだが、それはそっくりこっちのセリフだ。
「て、敵ぃ?」
「そうや?そもそも、うちらが仲良かったことなんて歴史上一度もないで」
白連は「因縁こそあれどなぁ」と笑う。
「……え。でも……」
「姫さんがこの子を保護したのを勘違いしたんかな?――ぼくやうちが、一度でもこの子の『味方』なんて言うた?」
「…………」
確かに、思い返してみればそうだったかもしれない。
それに、妙にジェイデンにつっかかるような態度を取っていた。しかし、それは彼の性質だと思っていた。
「特にうちの神さん連中は、あのえっらそ~~なお隣の人が大嫌いや。生理的に無理ってやつやな、同じ空気を吸うのも嫌なくらいや。――つまり、言わんでもわかるな?」
「…………」
白連は笑顔。
恐る恐る、視線を動かす。向かってくる四つのそれは、全て彼の言葉を裏打ちしている。
そして、よくよく感じてみれば……四つどころの話じゃない。
「……で、でも……」
「あぁ、いざなみさんらは別や。アレと一緒にしたらあかん。それはうちの姫さんを世間一般と一緒にするようなモンや。そんなアホな話はないやろ?」
「うっ」
それはそうだ。同列に語っていい話じゃない。
「ジェイくんがうちで安全無事におれるのは姫さんがおるからや。でも、今は……」
視線の先――そこには、眠り姫。
「まぁ、大丈夫や。殺されはせん」
「……え?」
「僕が説き伏せておいた」
救いの手に気持ちが浮上したが、その光の糸は同一人物によってすぐさま断ち切られた。
「この子はどうも『死にたがり』。そんなやつのの望み叶えてどうすんの、喜ばすだけやんか。絶対してやるもんかって感じやろ」
「…………」
この笑う狐目に、今のレオンはきちんと映っているのだろうか。
「まぁ、場合によっちゃそうなるかもしれんけど、今のところ大丈夫やね」
「!……ば、場合って……!?」
心配そうに尋ねるレオンに、もったいぶって焦らす顔。
「それは、その時になってのオ・タ・ノ・シ・ミや♪」




