宴
「まぁ、そんなことはよい。おい、酒をもてなせ」
「はぁ?もっと言うことねぇのかよ!」
ジェイデンなど全く眼中にないのがこの男――セキ。これにはサクヤが声を荒げた。
「我は神ぞ。もてなすのは当然であろ。お嬢の酒ができたと聞いておる。隠しだてするでない、はよう出せ」
「てめーらは『神』じゃなくて『使い』だろーが!偉そうにしてんじゃねぇ!それになぁ、神って言うからにはもうちょい大人になりやがれ!ちっちぇなぁ!」
「何と!無礼な!!我は最高位〝伊勢〟であるぞ!!」
「だ~~から!偉いのは〝伊勢〟であって、てめぇじゃねぇだろうが!!」
『伊勢』『出雲』『春日』『稲荷』。今ここに集う名を知らぬ者は国にいない。どれもこれもがその名を全土に轟かす格式高き名門。そして、彼らはその名門の名家出身。その出自を知れば彼らの態度は納得できるものもある。
偉そうに驕り高ぶるのは全般的な『神』の特徴でもあるが、その中でも『伊勢』の名は特別。それに胡坐をかいた結果、神をも見下すこの態度につながる。
その言われように「ざまぁみろ」と笑う残り三人だったが、サクヤから「てめぇらもだよ!」と叱責をくらう。
――そして、戦いが勃発した。
「……びっくりした?」
「!」
気配もなく突如現れた声。予期せぬそれに、レオンの身体は思いきり跳ねた。
そこでは、友人と瓜二つの顔がニッコリと笑っていた。
「気にしないでね、いつものことなの」
「……いつものこと?」
「うちの神様連中はどれもこれもえっらそ~~でね。それでとと様といっつも喧嘩してんの。うちでは日常だから、適当に聞き流しといて」
「……聞き流す……」
箱入りお嬢様のシェリーは、怒号すら目にしたことも耳にしたこともない。傷つくもの全てから守られて生きてきた。――つまり、こんな乱暴な現場は初めてだ。
今にも泣きだしそうにオロオロと動揺しており、「あ~、大丈夫だから」とヨシノが優しくフォローする。
「…………」
レオンは、血の源流を見た気がした。
「……精霊?」
紅茶に留まった、彼らとは違う新しい存在。その登場に「あぁ、そっちではそうだったね」とヨシノが笑った。
「え?」
「あれもうちの神様。八百万だからいっぱいいるんだよね」
姿形はさまざまで、人型もいれば獣型もおり、そうでないものもいる。大きさも手のひらサイズから大人サイズまで。まさしく『いっぱいいる』だ。
その中には顔見知りも多くいるらしく、サクヤやヨシノはすぐに囲まれた。
しかし、一番囲まれていたのは……静かに眠り続ける彼女だった。
「――さて」
清明が、口を開いた。
「姫は宴が大好きじゃ。初物もできたこと。ここで盛り上がるのも一興」
清明が空気を変えるように手をパンパンと叩くと、遣いの式神・こけし童子が徳利を持って現れた。
「うお~~!お前ら懐かしいなぁ~!元気だったか~~?」
「きゃ~~~!久しぶり~~~っ!」
サクヤとヨシノが、久しぶりの再会に歓喜の声を上げた。こけし童子も嬉しそうだ。
「――宴と参ろうぞ」




