任せるよ
「――出雲の」
サラが、初対面のそれに視線を向けた。
出雲の眷属――名をナオエ。引きずる長い髪は独特のカラーリングで縞模様を描く。
「何じゃ」
「蛇の目が出てるんだけど、説明してもらえる?」
同じ顔。しかし、全く違う。
その強さは脅迫じみている。
「お前らを追って出て行った。止めようもない」
国を閉じてから、守り続けてきた強固な結界。それが一度、内から破られた。
「あいつらは元々お前らに懐いてた。出て行くことにも猛反対だった。もういい加減、限界だったんじゃろ」
彼らが「国を出る」と宣言した時、誰もが猛反対した。それは完全な後出しじゃんけんで、事後承諾だった。
こうと決めたらテコでも動かない、頑固で自分勝手なのが彼ら。何を言おうが聞く耳を持たない。残される者の気持ちなど考えず、強引に国を後にした。
ただ一人――当主『サクヤ』のみを残して。
それから『姫』がやって来るまで、彼らは誰一人として帰っては来なかった。
「……まぁ、今ここで君を怒鳴りつけることは簡単だし、今すぐ乗り込んでこの拳をお見舞いしてあげてもいいんだけどね」
「っ!」
そそり立つ拳。隔てる顔布の奥でそっと視線を流せば、その被害者が横たわっている。
洗礼を受けた彼も、地底深くにめり込んだままだ。
「……でも、そこは我が娘に任せるよ」
「!」
「お――!!又吉~~!!」
「え~~!?マッチ~~!?」
サクヤとヨシノに歓喜で受け入れられた又吉もまた、万象のように息が上がっていた。
「…………」
言葉が出ない。こんなことがあるのか。
(……あれは、母君か……?)
同じ顔が三つ。……間違いない。
「おいおい、久しぶりじゃねぇか。えぇ~~?」
「……ほんとにな」
肩を組んで近くに寄る、悪戯に笑う顔。
そして、彼女を見た。
「…………」
眠っているだけ。その姿はいつもの彼女と変わらない。
でも、わかってしまう。
(………清明か)
こんなことができるのは一人しかいない。
「……ヨシノ」
「マッチ~~!久しぶり~~!」
彼女も、又吉をそう呼ぶ。
「……綺麗になったな」
「あら、それはど~も~」
又吉の知っている彼女はまだ幼く、その黒髪も長かった。
断髪は当主の証。それは『私』を捨てることを意味し、その瞬間に己が己ではなくなる。『サクヤ』『清明』とはそういう存在であり、彼らは一族で唯一。
ヨシノもサラも、双樹も『当主』だ。
しかし、その名は継いでいない――




