血が騒ぐ
風が強い。もうすっかり沈んだ空にどんどん分厚い雲がかかっていく。
闇を照らす灯篭の火。昼とは違う、社の夜の顔を映し出す。
気付けば、傍に人影。
「……清明様」
地震が、さっきから止まない。それはまるでシーソーのように。たった一本の柱を支えに不安定に揺れ続け、時折どこかで爆発の衝撃を感じる。
「――双樹は?」
頭を下げ、「御門へ」と答えた。
「……ほぅ。自ら動いたか……」
やる気がなく、普段は全てを森羅に丸投げの双樹。その度に万象が尻を叩き、蹴り飛ばし、首根っこを掴んで引きずり戻す。
しかし、選ばれただけはある。昼行燈は、闇の世では姿を変える。
「仕方ないとは言え、修羅の道じゃぞ。あの牛頭馬頭を越えぬことには御上への門は開かぬ」
それはその通りだが、例外が目の前にいる。彼女は、何も通さずそのまま会える。
そして、もう一人。それが――『姫』。
「しかも、あやつらは双樹を当主として認めておらぬ節がある。好かれていないのは明白じゃがの。対応をし損じると取り返しがつかぬぞ」
清明は、強い双眸で忠告する。
「最悪、わたくしが出る。しかし一応、『最終兵器』の『最終奥義』なのでの。出来れば使ってくれるな」
「………はい」
清明は、外を見た。
「森羅、気付いておったか?」
「……何がでしょう?」
「今宵は、新月じゃ」
「!」
「……我らに流れる、血が騒ぐ……」
月のない夜は、漆黒の闇。
闇に潜み、秘める者が動き出す――




