↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DOG  作者: 井上たつき
PR
58/86

エラー

「はぁ!?ジュリアがいない!?」

 対応に目まぐるしく追われるテオは、予想外のピピンからの通信に珍しく声を荒げた。

「どういうことだ!説明しろ!」

『ユエ。セキュリティに穴開けられた』

「はぁあ!?」

『わざわざご丁寧に修復までしてくれて。復元してわかった。マジ、ムカつく』

 言葉がだいぶ流暢で聞き取りやすい。これは、既に全開モードに入っている証拠。

 ボリボリと何かを食べている気配がする。そんなことはいつものことなのに、妙に神経を逆撫でする。

「何やってんだ、このハゲ電波!」

『寝てた。今、新しいのを構築中。あと、ジルと一緒にあのプレミアがいない』

「はぁぁあ!?」

『だっていないんだもん』

「だもん言うな!この万年寝ボケオヤジが!寝腐ってんのか!」

『お前だってトシそう変わらんだろ。見た目は年齢不詳だけど、実際は四十路の若づくりオヤジ。しかも、性別不詳の男女。詐欺。変態。お前のがよっぽど。しかもうるさい』

「ふざけるな!僕の美しさは全てを凌駕するんだよ!」

『〝僕は美しい。そして、優れ秀でている〟だろ?知ってるよ、お前の口癖』

 これはテオが高らかに謳う行動指針でもある。

 彼は基本、罵詈雑言の辛辣な毒舌家。その言動は確立された絶対的な自己評価に裏付けされており、これはその最たる象徴だ。

『もう耳タコでうんざり。ゴミ箱ポーイ』

「あぁ?」

 しかし、ピピンにとってはそんなことはどうでもいい。意味もないし興味もない。その為、さよならバイバイだ。

 苛立つ耳に「あ、そうだ」と追加。

『マックスが落ちたって。状況的にユエが内通してたってのが強い』

「~~っ、あの能無しイカレジャンキー!!脳ミソ溶けてんのか、使えない…っ!」

『アホウー?あれなら今、マックスの緊急治療中』

「はぁ!?」

『急を要すから。あいつ、病人は区別しないからね。それに、あいつの『男嫌い』って『自分嫌い』だろ。こじれすぎてて面倒だけど、やる時はやる。それはお前もわかってるはず。じゃなきゃ、あんなうざいのとっくの昔に殺してお払い箱だろ』

 テオからしてみれば、この「何でもわかってます」風な態度が心底気に入らない上に、癪に障って腹が立つ。

『穴はノエルがカバーしてるけど、アレこそ潰れたらエライことになる。なんかこの前、セッパ詰まった顔で俺のトコ来たし。一応フォローに回っとく』

「~~~~っ!お前が予定外の時間に起きると本当にロクなことがない!もう、一生寝てろ!連絡して来るな!つーか、寝すぎなんだよ!起きろボケ!動け!働け!」

『……お前こそ頭大丈夫?……いや、おかしいのは元からか』

「うるさい!」

『だからうるさいのはお前』

 ――テオ、ウー、ピピン。この三本柱は、組織を支える幹。

 難ありの曲者揃いの組織において、彼らは一際アクとクセが強く、極めて扱い辛い。が、それに負けず劣らずの実力を兼ね備えている。

「とっとと居場所特定しろ!」

『エラー』

「はぁ?」

『うちに残ってる二人は起動してる。いないあいつだけが、エラー』

 状況が状況なだけに、危険分子には全員、ここに来た瞬間から。本人も気付かぬうちに発信機が仕掛けられていた。

『あの制御装置はすごい。それに嘘はない。ホント、無能嫌いで実力主義のお前が見出しただけある』

 ジュリアが腕に付けるあれには、もしもの時の為にと発信機が仕込まれている。彼女の身を案じる、友人たちの愛のカタチだ。

『でも、専用の液体かなんかで外れンでしょ。シュリは確かに天才だけど、あいつはそれと同じかそれ以上だから。作ったんじゃ?』

「……あの、クソボケカスが……絶対殺す」

 おそらく、今のテオなら相手を呪い殺せる。沸々と何かが溢れだしている。

 認めたくないが、やはり認めざるを得ない。状況はいつだって後手だ。それに腹が立って仕方がない。

『もうちょっとしたら忙しくなるから、前線サポートと搬送受け入れの準備』

「僕に指図するな!キチガイ電波野郎!」

 普段の彼は廃人も同意。しかし、一度起きれば百人力どころの話ではない。

 ピピンの頭脳は、時空を越える。

『……うるさ』

 呟く声の奥から、ボリボリと噛み砕く音がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。