ゼット
「……ゼット」
「ウイルスを兵器として実践使用したいって国は多かったからね。利害の一致で今まで色々データを得た。感染時に脳をやられて大半は廃人なんだけど、ごく稀に反応が起きる。驚異的な治癒能力と生命力、超人的な能力を有すミュータント。――あの野良犬共の中にも、いるんだよね」
表情の変化を、ジェイデンもはっきりと捉えた。
「マッドリーが死んだでしょ。まぁ、うざかったから死んでくれて構わないんだけど。でも、あいつも大概だからね。やたらペット買ってたし。ラボ丸ごと火の海って普通じゃないよね。その時に……思い出したんだよね。昔、三日三晩火の海で焼き尽くされたとある王都の話」
「………」
「アレ、マッドリーの案件でさ。身内がうざったいっていう王様の命令で皆殺しにしたんだよ。『薔薇の騎士団』っていうんだけど、知ってる?『地上最強部隊』って有名だったんだけど。キミ、若いもんね。知らないか」
その語り口調は呑気で軽い。
「まぁ、確かにすごかったんだよ。あの国が帝国としてデカくなったのは間違いなく薔薇の騎士団あってこそ。あいつらがバリバリ出征して領土を増やしたからなんだけど、その功績を認めて先王が奴隷上がりのドブネズミを将軍にしちゃったんだよね。それで、『薔薇将軍』。……はっ、豪華すぎんだろっつーの」
「………」
「団員もどれもこれもが似たような底辺ばっかでさ、それが粋がってりゃうざいよね。殺したくなるのもわかるわ」
そこで、ジェイデンは気付いた。しかし、玉座で熱弁する彼はそうではないらしい。
「結果、騎士団は壊滅。将軍は晒し首。万々歳でオメデトーって話だったのが、王都丸ごと大炎上。王族も国民も一人残らず焼死。骨も残らないほどの業火で、栄華を極めた王都は焦土化。おかげで、大帝国は一瞬にして滅びましたとさ。めでたしめでたし」
パチパチパチと鳴る拍手の音が、殿の構造で大きく反響する。
「この件と、マッドリーの件が非常に酷似する。同一人物か、似たような能力者か。復讐か、それとも偶然か。ちょうど、薔薇の残党が一人いる」
「……知ってる?」
その顔は、ジェイデンには見えない。見えるのは、対峙する王だけ。
「何が」
「野良犬さんが、神を喰い殺すって話――」




