動き出す
白蓮は一人、空を眺めていた。
「……国に入ったか」
幹に背を預け、枝に腰掛ける。そこは、彼の特等席。誰にも邪魔されない、一番、天に近い場所。
そこから、軽々と降りた。かさりと草木が揺れる。
「なるほど……自滅するほどアホではないってことか。なるほどね……」
良くも悪くも、誇りが高い。『一族至上主義』も、裏を返せば強固な情。眷族の長として人間は忌み嫌うが、強い同族意識で仲間は絶対に守り抜く。
「王が眠ってるわけやしね……。するわけないか、そんなこと」
それでも、国は乗っ取られたと見た。元々異民族の攻防が激しい地域で人間の頭はしょっちゅう入れ替わるが、『神』がそうだったことはない。
「ん?」
感じた気配。草木に紛れ、それが足元まで這っていた。
「………蛇」
薄暗い闇の中、のそのそとピピンが起き上がった。ゴソゴソと辺りを探り出す。
「……あった」
気だるそうな寝起きの声。低く、掠んでいる。
手にしたのは、主食のチョコミント。掴み取りに有利な大きな手にごっそりと詰め、あーんと開けた大きな口に放り込む。頑丈な顎と歯でガリガリとかみ砕く。
「………アレ?」
アイマスクをチラッと捲り、その隙間から電光表示の時計を見た。
「やっぱ、ハヤイ。……ナンデ?」
テンポはゆっくりで、のんびりとしている。
「……あ~、うんうん。……うん。……うんうん」
宇宙人と交信でもしているかのように一人でブツブツと続ける、奇妙な電波男。その間もエネルギーがどんどんと口の中へ放りこまれ、のっそのっそと身体が動く。
甘く冴える香りが充満しする中で動きはちょっとずつ速くなり、確実に目覚めて行く。
「……さいあく」
そして、灯った。




