アルベルトとオリビア
「お久しぶりでございます。……アルベルト様」
頭を下げ、ふわりと揺れたオリーブ色の髪。
「………そう。君が、シェリー。……そう」
噛み砕き、吟味し、呑み込んだ。
「声、出たんだね。……良かったよ」
顔を上げた彼女を見て、嬉しそうに微笑んだ。
そこに、嘘は見えない。
「元気?」
「はい」
「そう。それは良かった」
交わされるのは、ただの挨拶。単純で完結な言葉のやりとり。
見ている方は意味がわからない。「アルベルト」に「オリビア」。本来、そんな人物はここにはいない。
そこに問いかけたのが、ジュリア。
「キャップ。シェリーと知り合い?」
(……〝キャップ〟)
そして、レオンの脳裏にあの言葉が蘇る。
『そこらへんは友人でもあるきみの裁量に任せるわ』
(……勘、外してほしかったですよ……)
「昔、ね。一度だけ会ったことがあるんだよ」
「あ、忍時代?だから名前が違うの?」
「……シノビ?」
「だって、キャップは七変化の忍だろ?変身して、名前も違う別人にドロンパ!忍はすごいんだ。私も最近、忍の里で修行を始めたんだぞ。今度、キャップにも教えてほしいなー」
「いや、俺は……」
そもそも自分が忍だったことはない。それが何かもよく知らない。でも、そんな戸惑いなどジュリアに聞き入れてもらえるはずもない。
「ねぇねぇ、みんなでサバゲーしようよ。この前マリたんとやって、私、急所に一発命中させた」
「………ほんと?」
「うん。でも、当てた隙にババババーっていっぱいやられた。私、瞬殺。まだまだダメだな。もっともっとだ。やっぱり、ハッパレンジャーはめっちゃ強いぞ。ハッパ戦隊入隊への道のりは厳しいな。むむむ、だぞ」
「…………」
いくら遊びと言えども、相手はプロ。いくつもの死線を腕一本で越えて来た本物の猛者。彼の性格上、『子供だから』『遊びだから』と手を抜くわけもない。
「私、もっと強くなる。早く外に出るんだ。だから、精進あるのみ。切磋琢磨だ」
「ハニ~~~!賢いな~、偉いぞ~、偉すぎるぞ~。ほんっと、天才だ~~!」
「…………ん」
親バカと兄バカがその名に恥じぬゲロ甘で褒めちぎる中、その中心で揉まれる彼女をもう一人の兄は違う視点で見つめていた。
――最近、ジュリアはなぜか急く。
それが、嫌な予兆に思えて仕方がなかった。




