薔薇の騎士団
「……それは興味深い」
報告を受けたテオは、そう感想を漏らした。
「原文のまま読めるって?」
流麗な声が「えぇ」と頷く。
『ジルの影響を受けてか、少しずつですが本を読むようになったようで』
そこに「はっ」と鼻で嗤う声が割って入った。
『どーせ、『勉強しろ』『読め』『バカが』とか言ってけしかけたんだろ。挑発と押しつけはあいつのオハコ。ケンカ売る天才だからな。……おっと、俺は本当のこと言っただけだぜ?』
良すぎる耳は、それを感じ取った。
『逆に、現代語はどれも無理だそうです。ジルが音読で読み聞かせをしていると』
「アレが読み聞かせ……立派になったもんだ」
『大体の主要言語なら読み書き会話はネイティブ並みですよ。耳がよくて吸収が早いんです』
それは、どこか誇らしげ。
「まぁ、どうも禁族連中ってのは『言語』にとらわれない傾向にある。あいつの国の言葉なんて全く知らないが、初っ端からコミュニケーションが取れた。今回来た二人も同様。古語しか読めないっつーあいつとも、言語的には支障がない」
『それも能力なのかもしれませんね。『神は言語を分け、通じない言葉により人類を乱した』と言います。それに当てはまらないわけですから』
「……国の言い伝えか」
それを「けっ」と馬鹿にする音が聴こえる。
「しかし、あながち間違いではない。言語をはじめとした文化の統一は支配者がまずやることだ。――今も無理矢理一つにまとめようとしてる大バカ野郎がいるがな」
昏く沈んだ声に、一同は身を引いた。それは、誰にでも容易に聞きとれる迫力。
『マクシミリアンの読みが当たりました。さすがですね』
評価の言葉も、本人は「いえ」と謙虚に否定した。
『そういや、最近やたらと調べてるぜ?――〝マニ族〟』
語尾が、ニヤリと嗤った。
『それは……大丈夫なのですか?』
幼い声が、不安を口にする。
『機密事項は閲覧禁止。当然、『闇市場』関連は検索できねェ。一応の世界常識だけだ。問題ねぇだろ。タキなんかも似たような出だし、少数民族を知ること自体は悪ィことじゃねェ』
「――どう思う。指導担当」
意見を求められ、全員がそれを待つ。
『あの子が自分で考え、動き、導き出したということ。評価に値します』
それに一つ、「バァカが」と貶す残響。
『……あと。それ以上に検索してるモンがあった』
「なんだ?」
『――薔薇の騎士団』
おそらく、二人は向こうで驚いている。
テオは一つ、「そうか」とだけ呟いた。




