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DOG  作者: 井上たつき
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聴こえる

『マイロの母様はさぞや美人だったんだろうね~~。アレが見初めるくらいだし?』

『私はね、前世様にソックリなんだよ。知ってる人にはすっごいビックリされる』

『親に似るのはそりゃ誇らしくて自慢だろうけど、それだけじゃないからね。別に気にすることないんじゃない?』

『そりゃ、確かに血は大事だよ。でも、それだけで家族になるわけじゃないじゃん』

『家族は『心』でなるんだよ』


 マイロは、瞳を開けた。

 仰ぎ、空を見る。宮殿から離れた場所で、一人、静かに。

 一族の共通点は『色彩』と『美しさ』。

 エキゾチックな風貌に、青と白のコントラスト。どこかがおかしくて、ずっと奇妙で。

 今思えば、その時。気付かぬうちに望んでいた言葉に、心を捉われた。

 その彼女と、全く瓜二つ。血か、魂か。

「……来たか」

 前を向くと、そこには二十歳ほどの若い青年がいた。

「――セス」

 下半身を布で覆った逞しい半裸の彫像に、青と白のコントラスト。瞳に海を宿し、宝石の肌を持つ。『水も滴るいい男』という表現がここまで似合う男もそうはいないだろう。

 美しい美しい、神秘の一族。ミックスの自分とは違う、ピュアの力強さがそこにはある。

「久しぶりだな。あの時以来か」

 陸上が吐くほど嫌いなこの男が。自らの足でやって来た。

「シェリーの件はお前も納得の上でのことだろ?あいつはもう子供じゃないぞ」

 聞かずとも用件はわかる。決まっている。

「王はシェリーに甘い。そして、あいつに弱い」

「そりゃ、『恩人』だからな。数多の瀕死の命をあの能力で救われた」

「……お前らが、何もしないから……」

「うちにはあんな回復能力はねぇよ!それに、働いてくれるなら俺もこんなに苦労してねぇんだよ!!」

 恨みがましい言葉に、バンバンと地面を叩いて抗議する。

『……魂が視えるって?』

 脳裏に、過去の自分が響く。

『うん。ついでに、喋れるよ』

『マジで!?』

『うん。それもうちの能力の一つだから』


 ――声が、聴こえるんだよ。


 それがきっと、彼女にも。そして、目覚め始めている。

 一つ、ふぅと息を吐いた。

「シェリーのゾッコンぶりを見ればわかるだろ。……まぁ、タラシなのは血筋だけど」

 気付いた時は、もう手遅れだった。

(……あぁ、なるほど。それも気に喰わないのか……)

「……何が可笑しい」

「いや、悪い。そうじゃない」

 どうやら笑っていたようだ。おかげで、ただでさえ悪い機嫌をさらに損ねてしまったらしい。

「……ちょっと、思い出してたんだ」

 ――〝神をも一目で惚れさす〟

 そう称えられる一族。その象徴が、言った。

『神様ってさぁ、ほんとメンクイだよね』

 それも繋がりか。美しい一族は根っからの美しいモノ好き。持ち前の美貌と手腕で惑わし、卑怯だろうが騙し打ちだろうが、気に入ったモノはどんな手を使っても須らく手中にしてきた。

 しかし、彼らは――手に入らなかった。


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