滅んでいます
「それが、新たな解析結果だ」
テオが部屋で通じるのは、自身の目で選出した三人のインテリジェンス。
「損傷が激しかったからな。特定に時間がかかった」
『装束は絹……絹!?』
楽器だと例えられる声が、変な音を出した。
『これのどこが絹!?科学繊維じゃねェの!?』
「データのみを見ればな。でも、あれは絹だ。間違いない」
テオは、自分の目に確証と自信がある。
「強度が鋼鉄並の、でも本来のしなやかな糸を紡ぐ蚕。これが天然物か人工物か。今、さらにに詳しく調べさせてる」
『しかも、火にも水にも強いんですか。……すごいですね』
ワルツのリズムが、驚嘆を奏でる。
『確かにあの辺りは蚕の原産地だけど、別にそこだけってわけじゃねェしな。あとは装飾品……靴じゃなくてサンダルなのな。これは革と、柳の枝?へェ……』
『ベルトも革。……これ、『不明』ってなんですか?』
「流通してるどの革にも一致しない。ヤギと牛のいいトコ取りみたいなやつだ」
『ということは……』
『新種の可能性が高いな』
導き出された答えに、テオは僅かに口元を緩めた。
『もしそれが天然なら、蚕もそうである可能性が高い』
『だとすると、『未開の地』になりますね』
『バックルと服を留めてたピンは青銅製。今ドキ青銅なんて使うヤツいねぇよ。でも、それが切り離された場所ならおかしくねェ――』
そこまでいって、止まった。
『あぁ~~~、そうだ。そうだったよ畜生がっ』
『地図が役に立たないんじゃ、どうしようもないですね』
現在、世界は未曽有の大惨事。世界地図が地理的に大きく変わろうとしている最中。渦巻く雲が厚すぎて、衛星からも捉えきれない。
しかも、高い可能性を秘めている場所が……最もひどい震源エリア。
「――お前はどう思う」
テオは、今まで一切発言がなかった小さな影に尋ねた。
『この装束は、一枚布で出来ているんですか?』
「あぁ。ボロボロに擦り切れてはいたが、あれは一枚。赤は血で、元は真っ白だ」
『――――』
「どうした」
『推定される地域に、このような民族衣装はありません』
『だから、それが未開の地ならありえるだろって』
『いえ、そうではありません』
『あン?』
「……………」
彼の目は、テオが認めた。自分以上に、視える眼。
『昔……古と言った方が良いかもしれません。その時代に、この民族衣装があります』
「!」
『!?』
『――なんだって?』
「民族は残っています。ただ、その文化はもう……」
――滅んでいます。




