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DOG  作者: 井上たつき
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13/86

ソウルメイト

「遊び……ねぇ」

 目の前には、障害物盛り沢山のアスレチック。

 ここに来てから、ジュリアと共に身体を鍛えるのがレオンの日課になっていた。一日に何度も手合わせし、トレーニングルームで互いに己の研鑽に励む。

「……なるほど。難易度によってステージが五段階に分かれてんのか」

 ここは第一段階。難易度が一番低いファーストステージ。これをクリアした先に、次への扉を開けるボタンがある。

『ちょっと実家に帰る。その間、よかったら遊んでろ』

 そう言われて、ここに来た。

「遊んでろっつーけどなぁ……」

 レオンは大自然のアスレチックで育った。遊びながら鍛えられていた。その発想は同じかもしれないが、これは明らかに『試す為』に作られている。

「こ~んに~ちはぁ~」

「っ!」

 突然の声。

 バッと振り向くと、誰もいなかったはずのそこに――人影。

「……ハクレン、様?」

 腰まで流れる白銀の長髪。狐の面を被った、蓮の花が咲く着流し姿。名は――白蓮。

 その奇妙な姿に、過去一度。見えたことがあった。

「お久しぶりやなぁ、レオンくん。当代の即位式以来かなぁ?」

「……ご無沙汰しております」

 畏まる姿に「そ~んな堅苦しいのはいらんてぇ~」と笑う。

「ジルなら、いませんよ?」

「知ってるでぇ?難儀なことに、御門家におってなぁ。おかげで僕はロンリネスなんよぉ」

「……ミカドケ?」

「うちの分家筋になるんやけど、他とは違って地位と発言力が本家に匹敵する。例えるなら、きみんトコの〝ガーディアン〟や。うちの大切な魂を守護してる。あんな重装歩兵みたいな戦闘バリバリの肉体派じゃなくて、マーリンさん寄りやけどな」

「マ、マーリン……ですか」

 それは『王』と『守護者』に並ぶ、国を支え守るもう一つの柱。

「うちは術師家系やからねぇ。貴族の趣が強いから品格として武芸を修めてるけど、そこまでゴリゴリじゃない。やたらめったら美意識高いの多いし。大和さんなんかは、それに『武士』を掛け合わせた感じやな。あんな人、かなり珍しいんやで?」

「そうなんですか……」

 レオンは『武士』を知らないが、『騎士のようなもの』と説明を受けている。

「御門家は大和さんのご実家でな。御婚礼の際に本家に入ってるから〝名代〟なわけやけど、ほんまはそこのご当主様なんよ」

「えっ」

 一族の名代と務める大和とは、白蓮と時を同じくして見えた。

 初めて見る、類を見ない装束姿。馬に乗って颯爽と現れた、騎士に似た英姿。

 大切な、姫を連れて――

「……その、どこが〝難儀〟なんですか?」

「これはうち独特でな。ちょっとわかりにくいかもしれんけど、御門が相手にするのは『人間』。一族の『表の顔』や。そこらへんは、きみの場合王家の仕事かな」

「………」

「人間相手の大変さはきみもわかるやろ?おかげで性格がま~~~あ、ドギツイ」

「……なるほど」

 一つ、納得。

「大和さんには二人の弟君がいらっしゃる。これが現当主と当主名代なんやけど、ま~~~あ、長兄を敬愛してる。俗に言う『ブラコン』って類のヤツで。色々と強烈すぎるんで『牛頭馬頭』って恐れられてるんよぉ」

 そう言う割に、楽しそうなのは気のせいだろうか。

 しかも、妙に突き刺さる。

「本家当主は昼行燈のボンクラ。誰がどう見ても大和さんの方が立派で当主にふさわしい。なのに〝名代〟なんて名で小間使いにしてる今の本家にいい感情を抱いてない。その上、ご自身のお子以上に甥っ子にご執心で。しょっちゅう口を挟んで、大和さんにご叱咤受けるほどなんよねぇ」

「……甥っ子?」

「大和さんのお子で本家嫡男――先代の忘れ形見や」

「忘れ………そう、ですか……」

 全てが同じわけではないだろう。しかし、リンクする。

「大和さんが国を空けることも多い。だから余計、あの方々が堅牢に守り続けてた。そんな男が、ついに元服を迎えるってなってな」

「元服……」

「成人の儀式や。これで晴れて、アレも一人の男。大和さんもお戻りになって、みんなで祝宴やと思ってた、そんな時に――コレや」

 大きな猫目が。じぃと見据える。

「おかげで延期。そんな場合じゃなくなったからなぁ。大和さんもあいつも、自分のことは二の次って性格やし。そんなこんなで、クソご機嫌が悪いわけ」

 そして、もったいぶるようにこう言った。

「あいつは、姫さんのソウルメイトなんよ」

「ソ、ソウルメイト…!?」

「っくくく、おもろいやろぉ?そりゃもう、め~~っちゃ影響受けてるんよぉ」

「…………」

 アレの影響を受けて、面白いことがあるのだろうか。恐ろしいことしかない気がする。

「たぶん、そのうち会えるわ」

「……え?」

「ほんま、すぐにな」

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