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次の日。
また私は能力を使い、身体を透明に変えた。
「よし!」
透明になって壁をすり抜け、地下室から出て上へ向かう。
更衣室と書かれた紙が貼ってある扉の向こう、赤いドレスを着た南さんは鏡の前で身支度をしていた。
「今日こそ頑張らなきゃ」
その小さな独り言を聞いた瞬間、私の胸が熱くなった。
(南さんの身体の中に入って、南さんをナンバーワンにしてあげるんだ。
そうすればきっと…、南さんは喜んでくれる)
私はゆっくりと南さんへ近づき、その身体に触れた。
吸い込まれるような感覚。
次の瞬間、私は南さんの身体の中にいた。
『えっ……? なに、これ……?』
南さんの驚く声が頭の中に響く。
『身体が……動かない……』
私は返事をしなかった。
返事をしたら、きっと怖がらせてしまう。
私は、南さんに教わった笑顔や仕草を思い出しながら、テーブルの席につき男性と会話する。
金の腕時計をしたスーツ姿の男性に甘えると、男性は次々と高いお酒を注文し始めた。
時間はあっという間に過ぎていき、気づけば店中が騒がしくなっていた。
「南、おめでとう!」
「今日の売り上げ、一位だ!」
歓声が聞こえる。
私は胸の奥が温かくなった。
――よかった。
――これで南さんの夢が叶う。
その思いだけを胸に、私は静かに南さんの身体を離れた。
視界が揺れ、私は再び透明な自分へ戻る。
誰にも見つからないよう地下室へ戻り、いつもの場所に座り込んだ。
体が元に戻り、私は急いで服を着る。
しばらくして地下室の天井から、南さんの声が聞こえてくる。
「これは夢!?私がナンバーワンだなんて、信じられない!!」
その声を聞いて、私は少しだけ笑った。
南さんは知らない。
今日、自分の身に何が起きていたのかを。
♢
次の日、地下室の扉が勢いよく開いた。
「聞いて!」
南さんは頬を赤く染め、息を弾ませながら駆け寄ってきた。
「昨日ね、私、ナンバーワンになったの!」
私は思わず立ち上がる。
「ほんと!?」
「うん!」
南さんは子どものように笑った。
その笑顔を見て、私まで嬉しくなる。
「でもね……」
南さんの表情が少しだけ曇る。
「信じてもらえないかもしれないけど、不思議なことがあったの」
「不思議なこと?」
「うん。更衣室にいた時、身体が勝手に動き始めたの。自分で動かしてる感覚がなくて、それなのに、ちゃんと動いてるの」
私は思わず黙り込む。
「…怖かった?」
私が尋ねると、南さんは少し目を伏せ話し始める。
「うん。知らない誰かが私をあやつってるみたいで怖かった…。だけど、こんなこと…誰にも言えなくて…」
私はもう隠しきれなくなった。
「それ、私がやったんだよ!」
「えっ?」
「私、透明になれるの!」
南さんは冗談だと思ったのか、小さく笑う。
「またまた」
「本当だよ!」
私は夢中で話した。
「透明になって、壁もすり抜けられるの。それでね、人の身体の中にも入れるんだ。南さんの夢を叶えたくて…、南さんの身体の中に入ったの」
地下室に静かな沈黙が落ちる。
南さんは笑わなかった。
驚いたまま、じっと私の顔を見つめている。
「……本当に?」
「うん。本当」
私はうなずいた。
嘘なんて、一つもついていない。
南さんは何かを考え込むように目を伏せる。
「もし、それが本当なら……」




