7
「気持ち悪い……」
南さんは、ゆっくりと後ずさった。
「そんなの、人間じゃない……」
その一言が、胸に突き刺さる。
「ひどいよ!」
私は思わず叫んでいた。
「私、人間だもん!ただ、不思議な力があるだけだもん!」
必死だった。
信じてほしかった。
南さんならわかってくれると思っていた。
でも、南さんの表情はどんどん青ざめていく。
「来ないで……」
一歩近づこうとすると、南さんはさらに後ずさる。
「勝手に身体に入るなんて、気持ち悪いことしないでよ…!」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
南さんは踵を返し、逃げるように地下室を飛び出していった。
「待って!」
私は追いかけようとした。
だけど、足が動かない。
さっきまで温かかった地下室が、急に冷たく感じた。
私はその場に立ち尽くしたまま、閉まった扉を見つめることしかできなかった。
それから何日待っても、南さんは地下室へ来なかった。
毎日、扉が開くたびに期待した。
でも、入ってくるのは店長だけだった。
ある日、勇気を出して聞いてみる。
「……南さんは?」
店長は面倒くさそうに、ため息をついた。
「ああ、あいつか」
興味なさそうに壁にもたれかかる。
「いきなり辞めるって言って出ていったよ」
「お店をやめたの……?」
「ああ。理由もよくわからん」
それだけ言うと、店長は地下室を出ていった。
扉が閉まる音が響く。
私は一人残された。
南さんはもう来ない。
私は膝を抱えて小さくなる。
あのとき、黙っていればよかった。
助けようなんて、思わなければよかった。
南さんは、初めてできた大切な人だった。
なのに私は、自分の力で、その人を失ってしまった。




