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第四十九話 平和な日常に戻ったら、居酒屋で後輩女子たちの秘密を暴露しつつ、同期のチャラ男を花火大会でくっつける作戦会議

 いつもお読みいただき、ありがとうございます!


 本日より新章です!


 暁子との絆を深め、公私ともに梅雨明けを迎えた悟。


 久しぶりに平和なオフィスで、頼もしく成長した結衣香と仕事のダブルチェックを進めますが……ノー残業デーの夜、真島課長に呼び出された居酒屋には予想外のメンバーが集結していました!


 結衣香や美瑠の可愛すぎる赤面シーンから、同期・水野の新しい恋を巡るドタバタな作戦会議まで、笑顔になれる第四十九話です!

「悟、来週末の花火大会なんだがな」


 定時すこし過ぎたころ、岩田電産に次いで大きな顧客である暮林製作所への提案書をまとめていると、真島課長が唐突に話しかけてきた。


「もう梅雨も明けたし、そんな季節ですか」


「お前も公私共に梅雨が明けた感じだしな」


「まあそうですね。本当に皆さんには頭が上がりません」


「そうだろう?頭、上がらないよな?」


 確かに岩田電産の件では阪下さんと結衣香には世話になったし、キャバ嬢廃業の件では葉山店長に助けられたから頭が上がらないのは本当の事なのだが、真島課長のこの言い方には嫌な予感しかしない。どんな無理難題を押し付けられることやら。


「で、何の依頼ですか」


「おっ、一皮剥けた男は一味違うね! さすが悟だ!」


「ちょっとその言い方! 結衣香もいるんですから気をつけて下さいよ」


「悪い悪い(笑)、まあ、ちょっと提案なんだが」


「はいはい、今晩お供すればいいんですね」


「悟、お前本当に物分かりが良すぎて気持ち悪いな」


「行きたいの行きたくないの、どっちなんですか⁉」


「は、はい、行きたいです!」


 真島課長に敬語使わせてしまった(笑)。少しは言い返せるようになったのはきっとここ数か月の大変だった日々のせいだと思う。


 真島課長も僕が殻を破ったと感じてくれているみたいだ。


「その前に、暮林製作所への提案書はもうほぼ完成しているので、直ぐにメールします。確認していただけますか?」


「もちろんだ。時間も節約したいから、阪下さんにも同時に送ってくれ」


 真島課長は提案内容について、阪下さんは法務的観点から間違いがないかを同時にチェックする、という事だ。

 

 岩田電産の都賀常務の一件以来、僕は契約書だけでなく、提案書についても阪下さんを必ず内容チェックをお願いしている。

 阪下さんは、


「いちいち私を巻き込まないでくれるかな。これでも忙しい身なのでね」


 と言ってものすごく冷たい対応しかしてくれないけど、実際はきちんと内容をチェックして、アドバイスまでくれる。

 社内法務担当者を味方につけておくことにメリットはあってもデメリットはないように思える。


 会話を聞いていた結衣香が手を挙げて僕の注意を引く。


「先輩、私もダブルチェックしますからメールでCCつけてください」


「あ、それは助かる。じゃあそうするよ」


「任せてくださいよ。私もこの件に少しだけど咬んでいるんですから」


 結衣香も本当に成長したな、と感じさせられる毎日だ。


 こうして結衣香と仕事を一緒にすると、先輩として誇らしくすら思う。


「どうしたんです? なんか嬉しそうですね」


「えっ⁈」


 顔に出ていたらしい。


「そうだな。なんか結衣香がすごく立派になったなって。そう思っていたんだ」


「ぼ、ボクをからかってるんですか⁈ や、やめてくださいよ!」

 

「からかってなんていないさ。本当にいつも助かっているよ。ありがとう」


「べ、別に先輩のためにやっているわけじゃないんですからねっ! ボクちょっとお手洗いに行ってきます!」


 結衣香は顔を真っ赤にしてオフィスから出て行ってしまった。


「お前も罪な奴だな」

 

「えええ、なんでですか?」


「お前、本当にそういう所だぞ」


「そういう所って」


「なんかそうやって優しくして結衣香に期待持たせるようなことするから」


「ち、違いますって! 仕事は仕事ですよ。岩田電産の一件以来、本当に結衣香には助けられているんですから」


「そうだな。でも気を付けてくれよ。あいつ、ああ見えて繊細だからな」

 

 それは言われなくても僕はよくわかっている。

 

 感謝を伝えるにもいろいろ考えなければならないのは正直つらいけど。


 今日は「ノー残業デー」という有名無実化している定時で退社を推奨する日だったので課員は殆どいなかったからこのような際どい話をオフィスで出来るのではあるが、会話を他の社員に聞かれていないか辺りを見回したが大丈夫だった。


 ちなみに水野は定時になるとどこかへ行くと言ってすぐに出て行ったな。


 もっとも、アイツはそんなに残業を買って出る方ではない。


 いや、仕事をしないとか、できないとかそういう事ではなくて、むしろ水野は僕が感心するくらいちゃんと実績を上げてくる。


 見た目と言動がチャラいので、中身がないバカセールスマンです、と自嘲気味に自己紹介することが多いけど、本当に人の懐に入り込んで本音を引き出したり、商談が危険な方向に向かっていると感じると道化を演じて上手く軌道修正したりできるのは僕にはできないことだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 僕はメールを課長、阪下さん、結衣香の三人に送り終えて、PCからログオフして、自分のバックパックに仕舞い込んだ。


 一足先に真島課長に「ここで待ってろ」と指示された居酒屋「大将」で生ビールを飲んでいると、「待たせたな」と言って真島課長と、結衣香とそして美瑠の3人がやってきた。


なんだこのメンツは。


 嫌だ。これはロクなことにならない、と僕の心が警報を発している。


「結衣香に立花さんまで。今日は何の話ですか」


「パイセン、ずいぶんなご挨拶じゃないですか」

 早速立花さんから噛みつかれる。


「だから花火大会の話だって言っただろう? お前何を聞いていたんだ?」


「あ、ああそうでしたね。花火大会がどうしたんだろうとは思っていたんですが、要するに社員みんなで行こう、みたいな話になったんですか?」


「尾上悟パイセン、察しが悪すぎ」


「おい美瑠、その言い方止めろって言ってるだろ」

 結衣香は窘めたが、美瑠の相変わらない僕に対する酷い言葉遣いには悪意がないことはここ数か月の付き合いで理解している。


「まあ、そんなところだ。社員みんな、っていうのはちょっと違うんだがな」


「じゃあどういう志向なんですか?」


「そう焦るなって。乾杯してから話そうぜ、悟」


 オーダーしたドリンクが全員分運ばれて来た途端、めずらしく立花さんが乾杯の音頭を取った。


「カンパーイ!」


「美瑠、お前随分と積極的になったんじゃね?」


 結衣香が言うように、美瑠はどちらかというと人を引っ張るより、陰に隠れて様子を見ている感じがする。


「そぉですか? まあこのメンツならこれ位の事は訳ないですよ」


「美瑠は前に比べるととっつきやすくなったな」


「もーぉ、真島課長まで」


「褒めてるんだぜ? いい事だよ」


「ならいいんですけど。で、悟パイセンはなんでニヤニヤしてるんですか?」


 おっと、またもや火の粉が飛んできたな。


「立花さんと、こうやって乾杯したりする間柄になるなんてね。ちょっと感慨深かったんだよ」


「……キモっ」


 なんだよ、そんな言い方……しかも間があいてから。


「おい、美瑠。いい加減にしろ」


「だってー、結衣香先輩」


「お前、センパイの事『ちょっと見直しちゃった』とか言ってたじゃねーか」


 え? 立花さんが? 僕の事を?


「結衣香先輩! それは言わない約束……」

 立花美瑠はたちまち顔を赤らめて言葉を失ってしまった。


 僕も予想外のことにちょっと動悸が早くなった。


「た、立花さん?」


「ちょっ、マジにならなんでくださいよパイセン。冗談に決まってんでしょ?」


 まあそうだよな。期待した僕がバカだった。


 でも結衣香はニヤニヤしているのを止めない。


 すぐに真島課長が割って入った。


「ところでだ。今日の本題に入るけどいいか?」


「は、はい」

「ほーい」


「水野を花火大会で何とかしたい。詩郎ヤツをなんとか頼む!」


「何とか頼むって、その恋愛関連の話ですか?」


 オフサイトミーティングで結衣香にフラれて以来、水野はクソ金持ちのクソイケメンの癖に(僕のヒガミも相当だな)彼女は居ない。


 それは水野が結衣香にいまだに未練があって、「いつでもワンチャンあるんじゃね?」とか言って人のアドバイスを聞かないことに起因しているのだが。

 

「ボクはちょっと……」

 そう言った結衣香は、原因を作った当事者として当然のごとく気乗りはしないのだろう。


「チャラ先輩をどうしたらいいんです? マジマン」

 水野をチャラ先輩、真島課長をマジマンと呼んだことで結衣香が美瑠を睨んでる。


「詩郎はチャラい感じだけどな。結構ピュアなところもあるし優良物件だぜ? 立花」


「無理して薦めないでくださいよ。私にはあすか先生がいるんですから」

 そういえば美瑠は百合だったよな。


「パイセン、お前百合だったよな、とか思っただろ」

 図星です。


「あ、ああ、あすかさんとは最近どうなの」


「どうなのとか訳分かんないだけど。私はあすか先生の作品が好きなんですーぅ」

 どういう反応をしても角が立ちそうなので意味不明な笑顔を作ってやり過ごした。


 課長が少し説明に入った。

「結衣香の事はおろか、立花さんにヤツをお勧めという事ではなくてだな」


「私を呼んでおいて、じゃあ他に誰がいるんですか‼」


「うーん、立花さんがキーマンであることは間違いないんだ」


「私が?」


「おお。営業一課の土居ちゃんっているだろ?」


「ミレイの事ですか?」


「ああ。そのミレイちゃんの事だ」


 鈍感な僕でもわかる。水野が土居さんに興味があるって話だよね、これ。


「えっ、」


 と言って一瞬絶句をした結衣香の事を僕は見逃さなかった。


(あれだけ水野を邪険にしていたのに、他の娘のところへ行くと聞いて動揺してるのか……?)


 ところが立花さんは、


「やだー、マジマン、ミレイの事狙ってんですか?」


 明後日の方向に話が進みそうだったので、同じく真島課長の本意に気が付いていた結衣香が立花さんをたしなめた。


「本当に美瑠は察しが悪いというか、人の話聞いてんのか? 課長はぽちゃこだろ」


 口に含んだビールを噴き出す真島課長。

「汚ったなーい」


「結衣香、おまえなぁ。しかも沙織の事をぽちゃことかサラリと言うな!」


「すんませーん(笑) でもぽちゃこっていうのは悪口じゃないですよ。マジで沙織さんのチャームポイントじゃないですか」


「え、え、よくわかんないんだけど」

 立花さんはまだ状況が呑み込めていないらしい。


「要するに、土居さんと水野の仲を取り持て、っていう事ですよね? 課長」


 真島課長は大きく頷いた。


「えええええええええ!チャラ先輩なんでそう難易度高い相手ばかり選ぶんですかね⁉」


 ようやく話が進みそうだ。


 いや、またこんがらがりそうだ。


 最後までお読みいただきありがとうございました!


 今回は結衣香も美瑠も、赤面してパニックになる姿が最高に可愛かったですね!


 美瑠が裏で「先輩のことちょっと見直しちゃった」なんて言っていたのがバレるシーンにはニヤニヤが止まりませんでした。


 そして本題の水野救済作戦! まさか営業一課の土居ちゃんを狙っているとは……。


 それを聞いた結衣香の一瞬の動揺も意味深で、これからの花火大会がどんな波乱になるのか今から楽しみです!


「結衣香も美瑠も可愛すぎる!」「花火大会の作戦が気になる!」とテンションが上がった方は、ぜひページ下部から【ブックマーク登録】や【★(星)でのご評価】、【応援コメント】をお願いいたします!


 皆様の熱い応援が執筆の最大のエネルギーです。次回もお楽しみに!


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