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第二十六話 『ネットで調べたんです』無防備すぎる突撃とお家デートの夜。気絶から目覚めた彼女の可愛い企みと、最大のピンチ

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回のラスト、半透明のドアを開けてバスタオル姿で登場した暁子さん!

悟の理性が試される絶体絶命(?)のピンチでしたが、事態は思わぬ方向へ転がっていきます。「インターネットで調べた」と震える彼女に対し、悟が取った行動とは?

後半は暁子視点でお届けします。ニヤニヤが止まらないお家デートの夜をお楽しみください!

「あ、曉子さん? な、な、何やってんですか!」


 すりガラス越しの曉子さんは、バスタオルで身体を包んでいたが、この予想もしなかった状況に完全に僕の脳はパニくった。


「ですから一緒に……」


「ですからって、えええっ? だって下着を一緒に買うのも恥ずかしがってたじゃないですか!」


「下着の方が……恥ずかしいですよ」


「今は僕が恥ずかしいです! ちょ、ちょっと待っててくだ……」


「曉子入ります!」


 そう言って曉子さんはドアを開けて入ってきた。


「曉子さん? ぼくは入ってもいいって言ってない……です」


「えへへ。入っちゃいました」


 僕の背後に曉子さんがバスタオルを纏いつつ立っている状況に、ぼくは座ったまま背中を向けるしかなかった。


「背中を流しましょうね」


「えっ、そんなこと」


「だって、男の人はうれしいんでしょう?」

 

「曉子さん、そんなこと誰から聞いたんです?」


「その……インターネットとかで」


「インターネットぉ????」


 ぼくはそれを聞いて、振り向いて思わず大声で笑ってしまった。


「あははははは、はははははは」


 そこで気が付いた。曉子さん、震えている。


「酷いです。なんで笑うんですか?」


「ごめんごめん」


「悟さん酷いですよぉ。これでも私、一大決心して今日ここに来たです。笑うことないじゃないですか。こんなこと、こんなこと初めてなんですよ!」


 予想はしていたけど、やっぱり曉子さんは……そういう事だったのか。 


「曉子さん、ちょっと目を瞑っていて」


「え? なんで?」


「いいから」

 曉子さんが目を瞑ったのをみて素早く立ち上がって向き合った。


「いいよ、もう目を開いても」

 ゆっくりと目を開いた曉子さんはびっくりしている。


 ぼくはタオルの上から曉子さんを抱きしめて、


「そんな、インターネットで調べるみたいなことはしなくていいんです。ぼくたち、もっと自然に……その……仲を深めればいいんじゃないかなって」


「ごめんなさい。私、私、元カノさんに悟さんがまた取られちゃうんじゃないかって心配になって」


「それは絶対に、絶対にないよ」


「本当ですか? 本当に私だけを見ていてくれますか?」


「ぼくは曉子さんだけをみるから。本当だよ」


「うれしい」


 そう言うと曉子さんの身体から力が抜けてしまい、僕の腕に彼女の全体重がかかった。


「曉子さん? 曉子さん! どうしたんですか!」


 あれ、気を失っている。


 慣れないことをやろうとして、滅茶苦茶緊張していたんじゃないか?


 気が抜けてしまったんだろうな。


 ぼくは、バスタオル姿のまま曉子さんを抱えて僕の寝室まで運んでベッドの上に寝かせた。


 緊張が解けて眠ってしまった曉子さんにタオルケットを掛けてしばらく見ていたら、この上なく愛おしい気持ちになった。


(ぼくのために無理をして……そんなことしなくても、ぼくは曉子さんに夢中だってことをちゃんと言わないとな)


 ぼくは眠っている曉子さんを置いて風呂にもどり、身体を洗ってパジャマ代わりのジャージに着替えた。


(しばらく、このまま寝かせておこう。今日は僕だけじゃなく、曉子さんにもいろいろあって疲れているんだろうな)


 寝室でまだ眠っている曉子さんをみてそう呟いた。

 

 しかし可愛い。

  

 しかしヤバかった。


 自分の理性の堤防が崩れそうになった。


 曉子さんは自分の彼女だけど、初めてのことだからあんなに……震えるほど怖かったんだ。


 きっと今日の僕の行動は間違っていないと思う。

 

 お互いそんなに焦る必要はない。

 

 そういうことは……もっと楽しい時間をたくさん過ごした後でいいじゃないか。

 

 かっこつけではなく、ぼくは曉子さんに対して本当に大切にしたいと、心からそう思えた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「えっ、ここ、どこ?」


――私、東堂曉子が目を覚ますと、見た事がない部屋で裸にバスタオルを巻いて、その上からタオルケットを掛けられてベッドに横たわっていた。


 部屋の灯りは落とされていて暗かったけど、ベッドにもたれ掛かるように悟さんが寝息を立てているのがすぐ分かった。


 私は悟さんの部屋に寝せられてたんだ。


 あ、私、悟さんと一緒にお風呂に入ろうとして、ガチガチに緊張してたんだった。


 悟さんにその事を悟られて、優しく包んでもらったら気が抜けてしまったんだわ。


 わー、恥ずかしい。


 お風呂に突撃した事も、ここまで裸のまま運んできてもらっちゃったことも。


(あんなに無防備だった私に何もせず、ずっと側で守ってくれてたんだ……)


 悟さんを起こすべきかな?


 あ、私はまだお風呂に入ってなかったんだ。


 悟さんを起こさないように、そっと。


 抜き足差し足でお風呂に入ってきちゃおう。


 ごめんね、悟さん。もう少しこのままで寝ていてね。この体勢のままだと体痛くなっちゃうかな?



 ふと、部屋を眺めてみる。


 多分学生の頃から使っていた机、400冊は下らないと言っていた本がたくさんある書棚。


 窓の外から差す月明かりで仄かに見える。


 ここで悟さんは育ってきたんだな。


 タオルケット、ちょっと悟さんの匂いがした。


 少し男臭いけど、悟さんの匂いだってすぐ分かる匂い。

 

 ダメダメ、浸ってないで早くお風呂に入って来ないと。


 そっとベッドから抜け出て、音を立てないように悟さんの部屋を出た。


 階段を降りる。


 音を立てないように気をつけていても、少し軋む音がでちゃう。


 それでもどうにか一階に降りて、お風呂場に。


 買ってきた下着はもう脱衣所に置いてあるからこのまま入ってしまおう。


「お、悟さん、Dr.ブロナーなんて、なかなかいいシャンプー使ってるのね」


 男性用のトニックシャンプーとかでも我慢しないと、と覚悟していたけど、私も使った事があるラベンダーの香りがするシャンプーとリンスで助かった。


 髪と身体を丁寧に洗った私は、湯船に浸かって今日のことを思い出していた。


 他所のお宅でお風呂に入ると、それが親戚の家であってもすごく気を使う。

 

 また、自分の家との違いを色々発見できて面白い所もあるんだけど。


 しかし、自分でもびっくりするほど大胆な事を、悟さん相手にしてしまうなあ。私。


 今朝のキスは正直半分寝ぼけていた。


 なんか夢の中で悟さんにキスをしたつもりだったんだけど、途中で現実だって気がついて、慌てて電車を降りちゃった。

 

 誰もいなくて、本当に良かった。


 でも、あんなキスが悟さんとの最初のキスで悪かったなあ。


 悟さん気にしていないかな……


 それにしても悟さんをひどい目に合わせた元カノさんには本当に頭にきたな。


 自分でもたまに自分がわからなくなるほど頭に血が昇っちゃってあんな電話の切り方しちゃったけど、恨まれないかな。


 私が恨まれる分には構わない。


 でも、これがきっかけで悟さんなまた纏わりつくような事を元カノさんがし始めたら、どうしよう。


 えええい! 考えたってしょうがないわ!


 なるようにしかならないし。


 でも、私、絶対に悟さんを守ってみせる。


 どんな事があったって。


 あ、結構長風呂になっちゃった。


 あのまま悟さんを寝せるわけには行かないな。


 私はお風呂からでて、買ってきた下着をつけて、気が付いた。


 部屋着を貸してもらうんだった!


 どうしよう、このまま上に行って悟さんを起こしたら単なる変態女じゃない……


 あんなに悟さんはこんな私のことを大切にしてくれようとしているのに。

 

 あ! 名案考えちゃった!

 

 またタオルを巻いて寝たふりをすれば良い良いんだわ!


 わ! 私って天才!


 私はそう決めると、ドライヤーを借りて髪の毛を手早く乾かし、下着の上からバスタオルを巻いて悟さんの部屋に戻ろうとした。


 すると、リビングの方から私のスマートフォンから着信音がした。


 なんだか嫌な予感。


 スマートフォンをカバンから取り出すと待ち受け画面には「お母さん」と表示があった。


 しまった、今日の外泊のこと、言ってなかったんだ。


最後までご愛読ありがとうございます。

無防備な暁子さんと、彼女の震えに気づいて優しく包み込む悟。お互いを大切に想い合っていることがひしひしと伝わってくる、最高に尊いエピソードでした。暁子視点での「もう一度タオルを巻いて寝たフリ作戦」も微笑ましかったですね。


ところが、そんな幸せな夜に鳴り響くお母さんからの着信音……。果たして暁子は無事に(?)お泊まりできるのでしょうか。


本作を楽しんでくださっている方は、ぜひ下のボタンから【作品のフォロー(ブックマーク)】や【評価(★)】をいただけますと大変励みになります。読者の皆様の反応が毎回の支えになっております! 引き続き、よろしくお願いいたします。



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