献血サービス
人工血液製造所の横 天然血液製造所
「――こちらが【献血制度】です」
プレゼンするのはエクセル君3号 壇上に黒セーターを着て登場する
背後には血液パックと「1回献血:1日休日」と書かれたボード
「献血すれば血液不足は解決 しかも提供者には即日休暇 そして社会貢献」
「すごい……なんて画期的なんだ……!」
偵察兵として見学ツアーに参加したテイサツ2=ヘイシ
そしてその隣で、同じく目を潤ませていたのは――先輩元偵察兵テイサツ=ヘイシ
「俺達も魔王城なんて酷い所だと思ってたけど、日に日に良くなって行くんだ」
「今なら新しい人が増えると――勧誘した方もされた方も休日が5日サービスされる」
「そんなに休日が貰えるんですか?先輩!」
同じ人間の言葉にテイサツ2が食いつく
「ただし、一度王都軍に帰って考えよう、なんて事すると無効になってしまう」
「入ります!俺独身だし最近の王都軍は激務だし」
「おおう そうか良かった」
(だからお前の部隊を見学に誘えとエクセル君に言ったんだ)
――
「こういう事だったのか」
偵察部隊にこっそり付いてきていた雑務課元上司サボル=カントク
最近は自分も休みが取れないから王都軍から逃げ出してきた
「俺も入るぞ~! 休みをよこせ~!」
「新しい仲間たちが増えたようですね 皆さん拍手を」
エクセル君3号が満足げにもり立てる
「うぉー 魔王軍サイコー」
――
「こっちでは……休日が定期的にあって最高だな」
「昔の王都軍より良いくらいだよな」
「何よりたまに銀髪の美少女に【ありがとう】って言われるんだ」
その場にいた全員が、うんうんと深くうなずいた
あの感謝して来る子は何なんだ、というのが最近の休日の話題だ
――
「……このままだとヴァンパイア軍団の貧血率は回復しそうね」
保健室でハクイが報告書を確認しながら言う
「人工血液の備蓄も安定してきた」
隣で錬金術士ハガネも補足する
そして――
「天然の血液も備蓄が安定して来ました」
得意げに親指を立てるエクセル3号
「そう言えば、あの血液はどこから仕入れてるんだ?」
「ほら、地下で始めたじゃないですか【献血制度】 あれに王都兵も何人かスカウトしてて」
\ガチャッ/
「……今の話、全部聞こえてたんだけど?」
ドアの前に立つエクセル本体
「あと、我の知らないところで勝手に王都軍と接触して居たようじゃな」
その隣には魔王様が並ぶ
「最近コソコソと何かしているようだから、シエスタを忍ばせてみれば」
何も無い所からシエスタが「じゃーん」と自分で言いながら現れる
「シャドウエルフのシエスタをつけれれていたのか」
エクセル君3号が膝から崩れ落ちる
――
「これはその、天然の血液資源を有効活用した訳で……」
「偵察兵の寝返り工作は、さすがに王都軍の恨みを買うやつだから!」
エクセルが自分の分身を怒鳴る
「でもほら、テイサツさん達『休める……休めるぞぉ』って喜んでたんですよ」
「そういう問題じゃない!!」
――
地下施設 人間居住区
「いつの間に こんな所に変な物を作りおって」
魔王でさえ気づかない場所に作られた人工血液施設
更にその下には厳重に管理された天然血液製造所が広がっていた
中に入ると人間達が休日を楽しんでいた
「えっ……サボル=カントク?」
エクセルがその中に見知った顔を見つける
満点の笑顔だったサボルの表情が一気に曇る
「エクセル 見つかってしまったか」
イタズラが見つかった子供のように大人しくなる
「偵察部隊なら分かりますが、なぜ雑務課のあなたが?」
「休みが欲しかったんだ! お前が居なくなってから面倒なシフトは私達が作らなければいかんし
王都軍全体で休みが減っておる それに魔物は強いからもう負け戦だ!」
文句が一気に溢れ出る
周りの偵察兵達も軽くウンウンと同意見なようだ
「お前は良いよな 魔王軍で将軍になって良い気分だろう」
「俺は王都軍でも魔王軍でも、ただ一生懸命シフトを作っていただけです」
「この人類の敵め!」
「その辺にしておけ!!」
ブンっっ!!
横で聞いていたマオが魔力波を出し、人間達が吹き飛ばされる
「お前達は王都軍に送り返す 魔王軍は現在平和を維持しているからな」
「魔王軍の信用問題になる」
マオの当たり前とも言える宣言に兵士達が悲嘆の声をあげる
「そんな~帰さないでくれ~」「一生血を抜かれ休日でいさせてくれ~」
――
王都の門番が森から歩いて来る兵士達を見つける
おかしい、この時間に出ている部隊は無いはずだ
「んっ? あれ偵察部隊の奴らじゃないか?」
「おーい 生きてたのかー」
笑顔で迎える王都側の兵士に比べ
帰ってきた【本来喜ぶべき偵察兵達】は地獄のような表情だった
結果――
魔王軍から一時帰還したサボル含む偵察部隊は
「魔王城に帰りたい」「ここは地獄だ」などしか証言せず
王都軍上層部により【洗脳の可能性あり】と判断
現在は幽閉中である




