戻らない偵察部隊
地図に、また一つ赤い×印が増えていた
「……戻らん、また偵察部隊か」
報告受けたシキカンは溜息をついた
「撤退ならまだしも帰還しないとは……」
(なぜだ?最近は魔王軍も平和主義になったのでは無いのか?)
魔王軍の真意が分からない行動に答えが出ない
思考を巡らせる彼の前に、支援部隊副官リンパが一枚の紙片を差し出した
「こちら、敵兵の所持品から押収されたものです」
【オーガ3名 夜間外周部の索敵(接敵時はなるべく戦わない事 エクセル)朝シフトBと交代】
「これは勤務表か」
「はい 敵軍は全てシフトを組んで管理していると思われます そしてメモ書きの名前が――」
「エクセルか……やはり魔王軍で私達の敵となったか」
シキカンの顔がこわばる
「しかし 戦わないと書いてありますし、潜入して味方を助けている可能性も――」
「黙れッ!」
「雑務係のひよっ子が……まさか【魔王軍の戦力改善】まで行うとは」
――
沈黙の中、誰かが呟いた
「つまり……今の勤務のキツさって、あいつが原因? 」
室内がざわつき始める
「最近休みもろくに取れない」
「この前なんてシフト表が間違ってて交代来なかったんだが」
「敵の方が労働環境いいってどういうことだ」
「……休みがほしいのか?」
シキカンが呟く
「えっ」
意図が分からず会議室が静かになる
「……我々が過労死すれば魔王軍が同情してくるかもしれん」
「いや そんな魔王軍が同情などと――」
「……ならば働け そして勝て 会議は以上だ」
――
王都軍全体で士気が下がっていた
前は1日勤務で2日休みが当たり前だったのに
最近は2日勤務という週さえある
「あーエクセルとか言う野郎が魔王軍に寝返ったから」
「いや、むしろ居なくなったからシフトが回らねぇんだろ」
「雑務課の上司も居なくなったらしいぜ」
適当な事を言い合って不満を散らしている
「おい こんな噂聞いたか」
「魔王軍は天国だから、偵察部隊の奴らが帰って来ないとか言う話し」
最近王都軍でよく聞く噂だ
「捕まって拷問されたか殺されただけだろ?」
「でも最近は戦場で会っても、積極的に攻撃しては来ないからな」
「偵察部隊はどうなってんだ?」
一般兵士も上層部と同じく
魔王軍の不可解な行動を分からずに居た
このとき魔王軍ですら「偵察部隊が戻らない理由」を把握していなかったのだから




