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20話 鉄分では満たされない夜に



夜の魔王城

灯りは落ち、静まり返っていた

使われなくなった倉庫の影に、1つの影がしゃがみこんでいた

「……レバーって、こんなにまずかったっけ」

小さくつぶやいたのはヴァンパイアの少女 ユケツ=アールエイチ

長く伸びた銀髪、月明かりに光る紅の瞳

高貴な吸血種の末裔――だが今は、ただの貧血患者である


目の下にクマ 顔色は灰色

彼女の手には食堂から出たレバーのカス

「もう……鉄分だけじゃ無理なんだけど……」

かつては戦闘のたびに、負傷者から出た【流血血液】を洗浄再利用し飲み放題

敵の王都軍も定期的に捕虜として生血を摂取していた


だが――

「最近、戦闘が無さすぎる!」

魔王軍がホワイト化し、血が流れない

「私が吸血鬼だってこと、みんな忘れてるのかな……」

「私は……何のために、ここにいるんだろう」

ふらふらと立ち上がるレティ

足元がふらついて、数歩ごとにしゃがみこむ

「もう、お願い……誰か、刺されて……死んで」


――


――かつての日々

「ユケツさん、まだですか? そんなに飲んだら倒れますよ」

「大丈夫、ちょっと味見しただけぇ~(2リットル)」

吸血種として優雅に振る舞っていたころの記憶

今思えば、あれは夢のようだった


――


翌朝

食堂前には意識を失ったユケツが倒れていた

「誰か倒れてる! 血まみれだ」

「違う、これレバー持ってるだけだ」


「こりゃダメね……限界まで来てるわ、この子」

医療班ハクイが来て診断する


「あっ なんかちょうど倒れたっぽい」

ヴァンパイアの元へ視察に行こうとしたエクセル

シエスタに言われ保健室へと引き返す


「ヴァンパイア……ああ、そうか 血が無いとダメなのか」

言われてみれば当然のことだった

流血の無い職場づくりに成功したため、ヴァンパイアにとって地獄


「レバーじゃどうにもならないっぽいよ」

「輸血とかは?」

「他の魔物の貰ったりもしてたけど、最近は毒っぽくてダメだって」

「こんな所でも毒草問題か……いっそアレ抜いた方が良いんじゃないか?」


――


保健室に行くと廊下まで響く元気な声が聞こえて来る

「……う、うわあああああっっ! 血! 血だっ!!」

病室で目覚めたユケツの前に整然と並べられた高品質血液パックがあった

【採れたて・搾りたて・天然】

「こ、これ全部私のっ……!?」

「ご安心ください 継続供給体制を整えました」

枕元にいるエクセル君3号が答える

涙ぐむユケツ

「ありがとう……! やっぱり私はレバーなんかを食べない誇り高き吸血鬼!」


保健室に入ってくるエクセルとシエスタ

「何かいつも通り勝手に解決してるみたいなんですけど~」

振り返るハクイ

「あ~本体か 助かったよエクセル エクセル君が解決したからお前の手柄だな」

「はぁ~どうも」

状況が分からないが来た意味は無さそうだ

他の問題点解決に向かう


――


「このパック……王都軍 第2偵察部隊って書いてある……?」

首をかしげるユケツ

エクセル君3号が静かに告げた

「……今後も血が欲しければ、知りすぎてはいけない」


――


ユケツはその後も「給食」として血液パックが支給され、肌ツヤ完璧に戻っていた

廊下のコウモリ達も顔色よくピカピカといつもより明るく光っている

「あ~コウモリってヴァンパイアの眷属だったか~」

コウモリは過労+貧血だった状態から、天国のような環境になった

白く輝いているようにさえ見える


闇の眷属がホワイトで良いのかという疑問と一抹の不安を残しながら

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