表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

【余談】物語の大きな改訂・修正について

 今回のテーマは「物語の改訂・修正」についてです。本来の順番を考えると、プロットの作成完了後に物語の初稿を描いた時に、本来の流れの中で扱うのが分かりやすいと思いますが、先日描いた短編の物語に関して、「改訂・修正」について考える部分がありましたので、今回も余談として取り上げてみました。また、実際に先日の短編の物語の改訂も行いたいと思います。



 物語の改訂については、大きく分けて主に次の3個の種類があると考えています。


・ストーリーの変更・追加

・表現方法の変更・追加

・誤字・脱字等の修正


 「ストーリーの変更・追加」は、物語の内容自体を変更してしまうことです。例えば、「勇者が魔王を倒す」という物語が、改定後に「勇者が魔王に負ける」物語になる、というような具合です。ここまで大きな改訂を行うことは無いと思いますが、「物語の整合性を取るために伏線の部分を改訂する」「物語にシーンを追加する」と言った変更は、それほど珍しくないかもしれません。


 「表現方法の変更・追加」は、物語の大筋自体は変わらないものの、それをどのように読者に魅せるかという点の変更です。例えば、「物語全体を1人称から3人称への変更」「重要なシーンを回想の形にする」などと言った例が考えられます。単純に「眩しい」を「真夏の太陽のように眩しい」に変更するなど、何かを表現する文章を変更するというものもあるでしょう。


 「誤字脱字の修正」は言葉の通りです。よくあります。





 実際に他の作者の方の作品を読ませて頂いていると、このような改訂の話を見ることもありますが、多くが「誤字・脱字の修正」であり、「ストーリーや表現の変更」を見ることはあまりありません。「新作として描きなおす」という話はたまに見かけますが、これは既存の作品の改訂とは少し違うのかもしれません。



 あくまで私自身の感覚ですが、「ストーリーや表現の変更」が行われない理由には、


・一度公開した物語を変更することへのプライドや愛着

・改訂することによる物語全体の整合性をとることの困難さ


この2点が思いつきます。


 一度公共の場に公開した作品、しかも一定数の読者の方が既に読んでいる作品。これを大きく変更するということは、少なからず恥ずかしく感じるという感覚はあります。商業作家の方であれば一度公開した作品は、対価が発生している責任のあるものですし、また複数の編集者の方がその内容をチェックし推敲されたものであるはずなので、その内容を変更するというのは難しいのかもしれません。


 しかし、私は商業作家ではありません。公開前に私の作品をチェックしてくれる方はいませんし、言葉はよくありませんが、作品を公開することも単なる自己満足です。それであれば一度公開した作品にプライドを持つことよりも、後に気がついた事や、感想・アドバイス頂いたことを元に改訂し、後に読んでくださる読者の方によりよい作品を残すということを優先する、という考え方もいいのではないでしょうか。


 「物語全体の整合性」という点については、「物語のプロット(構成)」の問題です。

これがしっかりできていれば、「ストーリーの変更」についても、影響範囲の把握はそれほど困難ではないでしょう。








 実際に先日描いた短編の物語の改訂を行ってみます。とても嬉しいことに読者の方から物語への感想を頂くことができました。私自身で見なおしても気付けなかった意見を頂けているので、これを参考に物語の改訂を考えていきます。感想は公開されているものですし、問題ないかと思いますのでこちらにも抜粋させて頂きます。


> 前半は現代、後半はファンタジーのそれぞれ別の物語の1シーンを切り取って単純に繋げてみました的なちぐはぐな印象を最初に受けました。

> また、文中の男が同一人物なのか、関連しているのかさえ文章からは読み取れませんでした。

> 唯一、白いアイテム繋がりなのでしょうが、個人的に仔猫はアイテムじゃないような気がします。



 複合的な要素はありますが、ご指摘頂いている点はそれぞれの行に1点、全部で3点になるかと思います。これを、私自身が物語を描く上で考えていた事と合わせて検討していきます。




> 前半は現代、後半はファンタジー


 作者側の意図としては、前半・後半は共に「現代」という時代背景のつもりで描いています。「魔王を倒す」という、唐突に現れる出来事以外は、ごく日常の風景を描くという意識です。ここで、最後の猫のシーンを見返してみると、「現代」を連想させるシーンが一切ありません。さらに、文頭に「魔王」に関連する描写があるため、最後の1ブロックは「ファンタジー」の世界観に読み取れてしまうでしょう。例えば、「駅からの帰り道」や「彼の横を一台の車が通り過ぎた」等の表現があると、このブロックが「現代」であるという印象を付けられるかもしれません。




> 物語の1シーンを切り取って単純に繋げてみました的なちぐはぐな印象

> また、文中の男が同一人物なのか、関連しているのかさえ文章からは読み取れませんでした。


 この物語のコラムにも書きましたが、この作品は「描くシーンを間違える」ことを目的とした物語です。「魔王」に関連するシーンは、唐突・急展開・無意味と感じられると思いますが、その出来事や世界観を「説明しないこと」が目的ですので、それに関しては「ちぐはぐ」「とってつけのように見える」でも問題ありません。

 ちなみに、「魔王」のシーンは「魔王」である必要性はありません。「侵略する宇宙怪獣との戦い」でも「人気アイドルとの結婚」でも、「日常とかけ離れた劇的な出来事」であれば構いません。「『劇的』であること以外に意味の無いシーン」ですので、このシーンは他のシーンと「ちぐはぐ」になるのが当然とも言えるでしょう。


 しかし、それ以外のシーンは「現代人の日常」「その日の男は小さな事で運が悪い」という部分で共通していて、とってつけのシーンで「最愛の人を失う」という最大の不運にあう、というのが作者の描きたいものです。「魔王」に関連する前が3シーン、後が1シーン、また仔猫のシーンは「オチ」なので「運が悪い」という描写がありません。物語のバランスを考えると、唐突な「魔王」のシーンの後に、「日常の運が悪いシーン」が加わると、バランスが取れるかもしれません。また、この変更により文中の「彼」が同一人物という部分についても、連想がしやすくなると考えられます。


 ここでは、最初候補としていた「帰り道に惣菜を買う」シーンを検討してみます。初稿では「魔王・最愛の人を失う」シーン・出来事との違和感が大きすぎるため、「仔猫を拾う」というシーンに変更した、という経緯があります。「魔王」のシーンの唐突さや違和感は説明しないというのが前提ですので、違和感よりも描写されるシーンの調和を考えたいところだったのですが、「最愛の人を失った直後に、スーパーで惣菜を買う」という事象は、やはり物語としての違和感が大きすぎます。「日常の不運な出来事」かつ「その場面に違和感の少ない」というシーンを要検討です。




> 唯一、白いアイテム繋がりなのでしょうが、個人的に仔猫はアイテムじゃないような気がします。


 実は、この点については大きな点ではありませんが、最後まで悩んだ部分でもあります。「アイテム」という言葉に多少の違和感が残りつつも、「占い」で使われる言葉としては間違っていないという部分で悩みました。仕上げる時点で妥協することになりましたが、オチが「仔猫」ということであれば、それに違和感の無い表現を探すべきでした。いつも私自身が言っている「小さな違和感」が「物語の違和感」に繋がるという例だと思います。




 当然ですが指摘頂いた部分を全て修正すれば良い、というわけではありません。今回の物語で例えると、「魔王」に関連するシーンの世界観のバラバラさ・唐突・急展開な部分については、作者が意図して行っている部分ですので、この点については修正すべき点ではありません。自分が意図している部分に意固地になるのとは違いますが、指摘頂いた点をきちんと理解した上で、改訂すべきか、すべきでないかを判断することが大切だと思います。






 以上、物語の改訂と、実際の改訂の仕方について考えてみました。改訂後の物語は短編「ある男に一日」に、改訂前の物語はこの連載の「【短編ネタ作品】ある男の一日」に残したいと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ