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中央と撃ち合い

戦闘が始まる。


最初に動いたのは白瀬だった。


中央正面の敵へ一気に突入する。


それに合わせて味方が左右へ展開。


湊は撃ち合いには参加しない。


参加できない。


だが、視線だけは戦場全体を見ていた。


敵の動きが崩れる。


中央へ集まる。


予想通りだ。


焦りが判断を歪めている。


そして、その歪みが戦線の穴になる。


「今、右抜ける!」


湊の声に反応し、一人が移動する。


敵の裏へ回る。


射線が崩れる。


中央の敵が一瞬止まる。


その瞬間を白瀬が逃さなかった。


撃ち抜く。


一人、二人と倒れていく。


戦況が崩壊する音が、視覚情報として伝わってくる。


――だが。


【Enemy Respawned】


【Enemy Respawned】


画面端に通知が走った。


「まだ来る!」


味方の声が張り詰める。


中央制圧目前。


だが、終わっていない。


倒した敵が復帰している。


しかも、西と東を失った以上、敵の狙いは一つしかない。


中央。


最後の逆転拠点。


湊はミニマップを見る。


赤点がまとまって動いていた。


散っていない。


一直線。


焦っている。


だからこそ、雑になる。


「中央、全員戻る」


ぽつりと呟いた声に、誰も異論を挟まない。


白瀬が即座に指示を飛ばす。


「中央維持! 落ちた人、復帰したらすぐ戻って!」


さっきの戦闘でこちらも二人やられていた。


人数が足りない。


崩れた高架の陰に身を隠しながら、防衛ラインを作る。


空気が重い。


だが、不思議と恐怖ではない。


勝ちが見え始めているからこその緊張だった。


その時。


【ALLY RESPAWNED】


【ALLY RESPAWNED】


味方二人が復帰する。


東ルートから全力で中央へ向かっていた。


「戻った!」


「今中央向かってる!」


白瀬が即座に言う。


「合流次第、挟む!」


湊の視線が動く。


崩れたビル群。


瓦礫の隙間。


敵の進行ルートが、まるで最初から決まっていたみたいに見えた。


「右、三人」


「左、二人」


「中央奥、一人」


自然と口から出る。


白瀬が横目で見る。


「また見えてるの?」


「見えてるっていうか……そう動く」


曖昧な返答。


だが、今は誰も笑わない。


むしろ、その情報を前提に動き始めていた。


数分前とは、空気が違う。


神谷湊の言葉を、“作戦情報”として聞いている。


そして――。


敵が来た。


中央通路。


崩れた壁を飛び越えながら、一気に押し寄せる。


予想通り。


焦りでまとまっている。


「来た!!」


銃声が響く。


白瀬が先頭へ飛び出す。


正面を押し止める。


右へ味方。


左へ復帰組。


中央を挟み込む形になる。


だが、敵も必死だった。


中央制圧ゲージが止まる。


押し返される。


均衡が崩れそうになる。


その瞬間。


(……一人、回る)


「右瓦礫裏!」


湊が叫ぶ。


「抜ける!」


味方が反応。


咄嗟に射線を変える。


敵の裏取りが潰れる。


動きが止まる。


そこを白瀬が撃ち抜いた。


一人。


また一人。


中央が押し返される。



だが――。


「神谷!敵!!」


声が聞こえた瞬間には遅かった。


反射的に振り向く。


崩れた柱の陰。


リスポーン後、最短で戻ってきた敵。


距離が近い。


真正面。


湊も慌てて銃を構える。


撃つ。


外れる。


くそっ!心の中で悪態をつく


すぐに修正するも敵の方が速い。


乾いた連射音。


視界が赤く染まった。


【YOU ARE DOWN】


身体が崩れる。


画面が低くなる。


最後の最後で、撃ち合いに負けた。


悔しさが胸に残る。


やっぱり、自分は弱い。


盤面は見える。


動きも読める。


でも、撃ち合いでは勝てない。


その時だった。


湊を倒した敵。


その位置が完全に露出していた。


白瀬の視線が一瞬で向く。


「今!! 詰めて!!」


迷わない。白瀬の号令に合わせ、復帰組が左右から流れ込む。


撃つ。


敵が倒れた。


中央を完全包囲。


これで敵の動きが止まる。


数秒後。


【ENEMY TEAM ELIMINATED】


【MATCH RESULT:WIN】


画面が静まり返った。


そして次の瞬間。


VCが爆発する。


「勝ったあああ!」


「逆転した!」


「神谷マジで何者!?」


「最後死んだけど、全部当たってたじゃん!」


湊はリスポーン待機画面のまま、少し呆然としていた。


最後。


俺は撃ち合いで負けた。


何もできなかった。


なのに、勝った。


確かに、自分が動かした感覚だけが残っている。


隣で、白瀬がゆっくりヘッドセットを外した。


少しだけ沈黙。


そして、静かに言う。


「……最後、あれで良かった」


湊が顔を上げる。


「え?」


白瀬はモニターを見たまま続けた。


「あの位置で倒れたから、敵の射線全部見えた。あれなかったら中央落としてた」


短い沈黙。


それから、白瀬凛が初めて真正面から湊を見る。


探るような目だった。


警戒。


疑問。


でも、それだけじゃない。


確かな興味。


そして評価。


「……あなた、本当に何なの」


それは、この試合で一番重い言葉だった。


少なくとももう。


“弱いだけのプレイヤー”ではない。


その認識だけは、確実に変わっていた。

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