蓮の花
この話で最終回となります。
色々未回収の伏線もありますが、もっと人気が出て、たくさんブックマークが増え、「もっと続きが見たい」と言ってくれるような作品を作るのが夢です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
私は皆にせかされるように丸薬を飲み、その日はゆっくり休むが、タケルの苦しそうな顔を思い出して中々寝付けなかった。
3日してもやる気が起きずにいると辺りが騒がしくなる。
「鬼が攻めてきた!」
私はすぐに見張り櫓に登って塀の外を見る。
500ほどの兵と、ミワクがそこに居た。
ミワクは私に気づいて大声で呼びかけた。
「ハスハ!ここを開けるのだわ!戻って来るなら殺さずに村においてあげるのだわ!」
何を言っているの?
この城を攻める気?
扉を開けたらここにいるみんなは、きっと殺される。
「私は戻らないわ!このまま帰って!」
「ハスハ!混ざり者の分際で逆らうんじゃないわよ!!皆殺しにするわよ!」
子供たちが不安げに私を見つめる。
そこに、タケルが出て来た。
私が居る櫓に一気に登り、私の横に立つ。
タケルに肩を抱かれると少し安心した。
「今すぐに帰れ!」
「ふ、ふん!タケル!あんたの呪いが進行しているのは分かっているのだわ!呪いの力を使って戦えば、くまどりが胸に達してあんたは死ぬのよ!全員でこの城を落とすのだわ!」
ミワクの合図で鬼族の500の兵が門を攻撃し始めた。
わ、私のせいで、皆が殺されちゃう。
私は震えた。
「ハスハ、大丈夫だ。俺が何とかする」
そう言って私を抱きしめた。
「ずっと言えなかったが、ハスハ、好きだ。愛している」
私の唇にタケルがキスをする。
タケルはやぐらを飛び降り、塀を飛び越えて鬼族を惨殺していった。
「タケル!戻ってきて!!」
声は戦場の音にかき消される。
◇
血の匂いがし、ミワクが恐怖を露わにした表情で城から遠ざかっていく。
タケルが鬼族のほとんどを倒したのだ。
塀の上から様子を伺っていたギンコがすぐに扉を開けさせる。
「早く扉を開けるんだ!」
扉を開けると、動く者が居ない。
ギンコはタケルを引きずって城の中に入れる。
ギンコがタケルの胸元を開けると、くまどりが胸まで達していた。
くまどりが胸まで達する。
それは呪いにより死ぬことを意味する。
私は泣きながらタケルの元に走った。
「タケル!しっかりして!」
「ハスハ、最後に会えて良かった」
呼吸が消え入りそうなほど弱弱しく、その呼吸もどんどん弱くなっていく。
「そんな!私タケルの事が好きなの!もっと一緒にいたいの!」
「……俺もだ」
タケルがどんどん死に向かって行く。
嫌!
そんなの嫌!
私はタケルを助けたい。
その瞬間、時間が止まるような感覚を覚える。
私の心の声が聞こえる。
『タケルを助けたい』
『助ける力が無い』
『呪いは癒せない』
『私の力で呪いを癒すことが出来たらどんなにいいか』
『私がタケルを癒したい』
『すべてを癒したい』
『唱えて』
私は祈るように大地に両手をつけた。
どうすればいいか心が知っている。
「ハスの花」
自然と言葉が紡がれる。
タケルを覆う様に巨大な蓮の花が咲く。
蓮の花がつぼみに変わるようにタケルを包みこんだ。
蓮の花は大地の栄養を吸い込み、ハスハの魔力を吸い込んで輝く。
その輝きはすべてタケルに注がれる。
蓮の花はすべての生命力を分け与えるようにしぼんで、枯れていく。
枯れた蓮の花からタケルが姿を現す。
タケルのくまどりが消え、私はタケルに抱きついた。
息がある!
「うぐう、ううあ、ううう」
私は抱き着いて泣いた。
タケルも私を抱きしめる。
「……あ」
タケルは口を動かしながら泣く。
タケルは私をじっと見つめる。
「すまない。大事な人だと分かる。でも、名前が思い出せない」
「ハスハ、私の名前は、ハスハよ」
「ハスハ、そうか、ハスハ」
タケルは少し安心したような顔をして眠る。
私も、タケルに抱きついたまま眠った。
◇
私が目を覚ますと、部屋の中にいた。
横にはタケルが居て、私の布団のとなりにタケルの布団がある。
不安になってタケルの息を確認する。
「良かった。生きてる」
タケルの手を見ると、くまどりは消えていた。
良かった。
本当に良かった。
タケルが目を覚ます。
タケルの顔は、苦しさを抱えたような影は消え、穏やかな表情をしていた。
「はす、は?」
「そうよ、体の具合は大丈夫?」
「大丈夫だ。でも、何で寝ているか思い出せない」
「タケル!記憶が無いの?」
「昔の事が、思い出せない」
「そ、そうなのね」
私は涙を流す。
「ハスハが好きで、大事なことは覚えている」
そう言って私を抱き寄せた。
タケルの呪いは消えたが、記憶を失った。
消えゆく命の記憶までは癒すことが出来なかったのだと感じる。
蓮の花の花言葉は間違っていなかった。
蓮の花の花言葉は『離れゆく愛』
更に涙が溢れた。
タケルの顔を撫でる。
暗い影は消え、タケルは穏やかな表情をしていた。
その瞬間私は、記憶が消えて、これで良かったのだと思えた。
私と両親への負い目と苦しみを抱えたままタケルは生きていると、察していた。
タケルは私に気を使い続け苦しい影を抱えて、私とタケルは結ばれる事無く終わるのだろう。
でも鬼族が攻めてきた時タケルは私に告白した。
タケルが私に告白した時、タケルは死のうとしていたのだと思う。
死ぬから、最後だから告白したんだ。
記憶は失ったけど助けることが出来た。
忘れて離れた心は、またもう一度やり直す。
もうタケルを縛る鎖は無い。
タケルがやさしい笑顔で私を抱きしめる。
もう、大丈夫。
2人のハッピーエンドのお話はこれから始まったばかりなのだから。
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