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裏切者の真実

 城にいる者、全員が呼ばれ、タケルの周りに集まる。


 皆が座敷に座ると、タケルが話しだした。





 

 俺は人族として生まれ育ち、同じ人族の親友【ヤクシ】と薬草を摘みに山に入った。


 だがそこで狼の群れに襲われ、何とか追い払うが、俺とヤクシは傷を負う。


「ヤクシ、里まで帰れると思うか?」


「無理だと思うよ。血を、流しすぎた。あーあ、短い人生だったなあ」


「俺も、血が止まらない。助からないだろう」


「恋をしてきれいな嫁さんと幸せに暮らしたかったなあ」





 俺とヤクシが生きる事をあきらめた時、鬼族に助けられた。


 助けてくれたのがハスハの母、サクラだった。


「大丈夫!今助けるよお」


「サクラ様、この者は人族、助ける必要はありません」


「でも、悪い人じゃないって分かるよお」


 サクラは癒しの力を持っており、俺とヤクシは命を繋いだ。


 サクラの癒しの力は呪いさえも解いたようだが、その様子を見たことは無い。


 俺とヤクシは鬼の村に運ばれ看病されるうちにそこで暮らすようになる。


 俺はサクラに恋をした。


 だがサクラはヤクシの事が好きで、ヤクシもサクラの事が好きだった、俺に入り込む余地はない。


 2人は恋に落ちて子が生まれた。


 それがハスハ。


 蓮の花のような髪色で、両親はハスハと名付けた。


 俺はハスハという名前に反対する。


 蓮の花の花言葉は『離れゆく愛』、人族の俺としては縁起が悪いと思った。


 だが、ヤクシは縁起を気にしないし、サクラは「鬼族にとっては縁起のいい花なのよお」と言ってそのまま名前を変えることは無かった。


 2人とも気にしていない様子で俺は拍子抜けする。


 俺達3人はハスハを抱いて薬草を摘みに森に入った。


 村の近くで鬼族が魔物を狩っているから安全だと判断したがこのことが悪い結果につながる。


 いや、森に出かけなくても結果は同じだったと思う。


 武装した鬼族に囲まれたのだ。


 ヤクシとサクラの結婚をよく思わない者も多い。


 サクラは美しくて鬼族にも人気で、ヤクシに嫉妬する者も多かった。

 嫉妬には気づいてはいたが、人の村に行けば今度はサクラが殺されかねない。

 結局いい案が見つからず、そのまま過ごした。


 鬼族の男が言う。

「サクラ!混ざり者なんか産みやがって!俺の女になれと何度も言っただろーが!ヤクシを殺せ!」


 一瞬でヤクシが短刀で急所を刺された。


 俺は倒れるヤクシに駆け寄る。


 もう、助からないのはすぐ分かった。


「タケル、これを飲んでくれ、これを飲んでサクラを連れて逃げて欲しい」


 俺は2つの丸薬を渡された。


「1つはお前が飲んで、もう1つはサクラに渡して、欲しい。頼む」


 ヤクシは泣きながら訴える。


 俺は丸薬を1つ飲み、1つを懐にしまうと、ヤクシが動かなくなった。


「がはははは!ヤクシをやったか。次は混ざり者を殺せ!」


 俺は駆けだす。


 間に合わない!


 間に合え!間に合え!


 自分の体の動きが遅く感じた。


 のろい自分がもどかしく感じる。


 ハスハに迫るナイフを庇う様に、サクラが刺された。


「ち!やっちまった!」


 俺は時が止まったような感覚を覚えた。


 俺の内面からの声が聞こえる。


『俺は無力だ』

『もっと力が欲しい』

『俺には力が無い』

『代償が必要』

『二度と動けなくなってもいい』

『ここにいるクズを全員殺せる力』

『俺はどうなってもいい』

『力が欲しい』

 

 俺は鬼を1撃で殴り倒した。


『遅い!体が動かない』

『もっと早く!』

『力が出ない』

『もっと力強く』

『力を!唱えよ』


「魔装!」


 黒い服で体が覆われ、その上からマントが出現した。


 両手には黒い刀が握られる。


 その刀を振るごとに鬼族を1撃で倒す。


「うごおおおおお!!」

 俺は人とは思えないような唸り声をあげていた。


 鬼族を斬り刻む。


「ひ、ひいい!化け物おおおお!」


 逃げていく鬼族を斬り倒す。


 視界にいるサクラとハスハ以外すべてを切り殺した。





 俺はサクラに駆け寄る。


「お願い、ハスハを助けて!ハスハをお父さんに、届けて。ねえ、おねが、い」


「分かった!しっかり、しっかりしてくれ」


 分かっていた。


 もう助からない。


 サクラはもう助からない。


 分かっていた。


 俺がハスハを受け取ると、サクラが力を失う様に動かなくなる。


 サクラは安心して眠るように命を失っていた。


 俺はハスハを抱いてサクラの父の元に届けに向かったが、鬼族の皆は俺を避けるように逃げていく。


 ハスハを渡すと、俺は鬼の村から離れる。


 そこで気づいた。


 俺は泣いていて、両手にはくまどりの呪いがくっきりと浮かんでいる事に。








「これが、俺の見た真実だ」


 そう言ってタケルは話を終えた。


 私はタケルの話を聞いて泣いていた。


 色々な感情が入り混じる。


 でも、タケルの苦しそうな表情を見て、胸が苦しくなる。


 タケルが懐から丸薬を取り出す。


「これは、恐らく不老の丸薬だ。ヤクシが託したものだ。持ってるのがバレれば命を狙われる。ここにいる子供達にも危険が及ぶ。すぐにハスハが飲んで欲しい」


 私の手に丸薬を置き、私の手を優しく閉じる。


 そして私を優しく抱きしめた。


「辛い話をした。今日はゆっくり休め」


 そう言ってタケルは部屋を去った。


 私は部屋を去って行くタケルを黙って見送る。


 私が、あの呪いだけでも解くことが出来たら、どんなにいいだろう?


 回復の実の力では呪いを治せなかった。


 母さんと同じ、癒す力が欲しい。




 

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