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【完結】暗殺一家の令嬢ですが、政略結婚した騎士団副団長の愛が重すぎます。  作者: ほしよみ


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2

結婚から数日が経った。


ヴィオラの日常は、

表向きは「新妻」としての穏やかなものに見えた。

だが実際には、

屋敷に持ち込んだ暗器や変装道具を、

人目につかぬよう少しずつ隠し直す日々でもあった。


その日、ヴィオラは自室の棚の奥に隠していた

小箱を確認しようとしていた。


中身は、任務で使う暗器の一つ。

うっかり片付けを怠っていたことに、

朝になって気づいたのだ。


「ヴィオラ、模様替えを手伝おうか」


背後から声がして、

ヴィオラは飛び上がりそうになった。


「ビックリしましたわ!

    ――大丈夫ですから!」

「そう言わず。この部屋、少し物が多いだろう。

俺も手伝う。俺はこう見えて力はある」


アルノルトはすでに棚に手をかけていた。

ヴィオラは慌ててその手を掴む。


「あ、あっ、あー!」

「どうした?」

「……大事なものがあるの」


咄嗟に出た言葉だったが、

アルノルトは一瞬目を見開くと、

なぜか嬉しそうに口角を上げた。


「そんなに大事にしてくれるものがあるとは」

「え?」

「いや、ちょっと嬉しくって」


(えっ?何?)


「楽しみにしている」


上機嫌なアルノルトは、

それ以上棚に触れることなく

別のところを片付け始めた。


(何か勘違いさせてしまったわ。

 どうしましょう……)


その夜、夕食の席でアルノルトがこう切り出した。


「さっきの"贈り物"だが、

俺への誕生日祝いとして受け取っていいのか?

せっかくならと思って。

ちょうど来月なのだが、そのタイミングでもらいたい。

いいだろうか?

それで、その日は外で食事をしよう。

観劇もいいな。

そのあと夜景の見える部屋を予約して――」


ヴィオラは、フォークを持つ手を止めた。


(誕生日……知らなかった)


「え、ええ。もちろんです」

「楽しみだ」


満面の笑みを浮かべるアルノルトを前に、

ヴィオラは内心で頭を抱えた。


(暗器を、誕生日祝いとして渡すわけにはいかない……)


新たな厄介事が、また一つ増えた瞬間だった。


【After Story】

ヴィオラは自室で湯浴みの準備をしていた。

ソファから勢いよく立ち上がる。


「明日、町へ出るわ」


家から連れてきた侍女のエマは首を傾げる。


「任務ですか?」

「違うわ!」


ヴィオラは両手をぶんぶん振った。


「あの方が、

暗器を誕生日プレゼントだと勘違いされたの!」


エマは一拍置いてから、小さく頷く。


「……もう、

その暗器を差し上げればよろしいのでは?」

「駄目に決まってるでしょう!」


ヴィオラは即座に否定した。


「いい? 

今すぐアルノルト様の欲しい物を調べてちょうだい!」

「かしこまりました」


エマは手帳を開き、予定を確認する。


「では、明日は町へご案内いたします」


ヴィオラはほっと胸をなで下ろした。


「助かるわ」


エマは予定表をめくる手を止める。


「…………あっ。」

「どうしたの?」

「明日は、旦那様は巡回の日でございます」


ヴィオラの笑顔が固まる。


「町へ出られますと……

高確率で遭遇されるかと」

「…………。」


エマは真顔のまま、静かに付け加えた。


「旦那様、最近お嬢様を見つけるのが

お上手ですから」

「…………。」


ヴィオラは天井を仰いだ。


「……どうしよう、エマ」


エマは小さく息をつく。


「まずは、見つからない方法から考えましょう」


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