↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】暗殺一家の令嬢ですが、政略結婚した騎士団副団長の愛が重すぎます。  作者: ほしよみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/18

アルノルト5

商会で一人の男に渡した紙。


――いつでも相談に乗る。

 王宮騎士団副団長

 アルノルト・フォン・シュタイン


あの時、男の目には怯えがあった。


(何か知っている)


そう確信していた。


そして翌朝。

騎士団本部へ、一通の手紙が届く。


差出人の名はない。


『昼刻。宿舎裏門の先にある旧倉庫まで。

 人目につかぬよう、お一人で』


短い文だった。

罠の可能性も考えた。

だが、放置するわけにはいかない。


「午前の模擬戦は副官に任せる」


そう告げると、アルノルトは騎士団本部を後にした。


向かった先には、昨日の商人がいた。


周囲を何度も確認しながら、小走りで近づいてくる。


「副団長様……」


声は震えていた。


「誰にも見られていないな」

「は、はい……」


男は懐から小さな包みを取り出す。


「これを……」


アルノルトは静かに受け取った。

中には帳簿の切れ端が数枚。


日付。

数量。

武器の種類。

そして、王都でも名の知れた上位貴族の紋章。


「これは……」

「私は運搬を命じられているだけです。

ですが、もう耐えられません……」


男は拳を震わせた。


「逆らえば家族が殺される」


アルノルトの表情が険しくなる。


「安心しろ」


低く、力強く告げる。


「君の家族も含めて守る」


男は目を潤ませ、小さく頭を下げた。


「ありがとうございます……」

「この件は俺が預かる」


帳簿を懐へしまう。


「だが、まだ動くな。

相手はこちらの動きを探っている可能性が高い」

「分かりました」


男は深く一礼すると、足早に消えて行った。


アルノルトはしばらくその背中を見送り、

小さく息を吐く。


(証拠としては十分ではない)


だが、大きな一歩だった。

これで王宮内部にも捜査の手を伸ばせる。


(大きな収穫だった)


決定的な証拠ではない。

だが、これで王宮内部の捜査を進めるだけの

材料は揃った。


「あとは裏付けだな……」


誰にも聞こえないほど小さく呟き、

踵を返す。


そのまま騎士団本部へ戻ると、

副官が待っていた。


「副団長、お帰りなさいませ」

「変わりは?」

「特にはございません」


報告を終えた副官は、

思い出したように付け加えた。


「そういえば、奥様がお見えになりました」


アルノルトは顔を上げる。


「ヴィオラが?」

「はい。お弁当をお持ちになっておりました」


その言葉に、アルノルトは一瞬言葉を失った。

今日は模擬戦があると伝えていた。

昼は一緒に食べられると思って、

わざわざ届けてくれたのだろう。


「急用で外出したとお伝えしましたところ、

そのままお帰りになられました」

「……そうか」


胸の奥が少し痛む。

せっかく来てくれたのに、会えなかった。


「申し訳ないことをしたな」


思わず漏れた独り言に、副官は柔らかく微笑む。


「奥様も、

お忙しいことはご理解されているご様子でした」


アルノルトは小さく頷いた。

理解してくれている。

だからこそ、なおさら申し訳なかった。


(帰ったらきちんと謝ろう)


そう決めると、気持ちを切り替え、

机の上の書類へ視線を落とした。


武器の横流し。

王宮内部の内通者。


守るべき国のためにも、

この件は必ず明らかにしなければならない。


そして、その日の任務を終え、

屋敷への帰路につく。


(今日はヴィオラとゆっくり話そう)


馬車に揺られながら、

アルノルトは帰宅後のヴィオラの笑顔を

思い浮かべ、小さく口元を緩めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。