アルノルト 2
教会の鐘が、高らかに鳴り響く。
祭壇の前に立ちながら、
アルノルトは何度も深呼吸を繰り返していた。
(落ち着け)
王の前でも。
命を懸けた戦場でも、
ここまで鼓動が速くなったことはない。
一週間。
たった七日。
だが彼にとっては、
一年にも十年にも感じられるほど長かった。
早く会いたい。
早く隣に立ちたい。
早く妻と呼びたい。
その一心で、 王に頭を下げ、
ナハル侯爵に何度も礼を尽くし、
式の日取りを一日でも早められないかと奔走した。
「副団長……そんなに急がなくても、
花嫁は逃げません」
側近に苦笑されても、 アルノルトは首を横に振る。
(違う)
逃げる、逃げないではない。
誰かが彼女を見初めたら。
誰かが王に別の縁談を願い出たら。
そんなありもしない未来まで考えてしまう。
だから一日でも早く。
正式に。
誰にも文句を言われない形で、
彼女を妻に迎えたかった。
「花嫁のご入場です」
重厚な扉がゆっくりと開く。
純白のドレスを纏ったヴィオラが、
父親に手を引かれて歩いてくる。
その姿を見た瞬間、 アルノルトの思考は止まった。
(……綺麗だ)
胸が締め付けられる。
何度も会ったはずなのに、 今日は違う。
今日から彼女は、 自分の隣を歩く人になる。
父からその手を預けられ、
ヴィオラが静かに隣へ立つ。
触れそうで触れられない距離。
そのわずかな距離すら、 愛おしかった。
(本当に来てくれた)
神官が誓いの言葉を告げる。
二人は静かに頷き、 永遠の誓いを交わした。
「誓いの口づけを」
ヴェールを上げる。
アメジストの瞳が、 真っ直ぐ自分を見つめ返していた。
(俺は……)
ようやく、 今日という日を迎えられた。
唇を重ねる寸前、 思わず小さく笑みが零れる。
(俺は、今日という日をずっと待っていた)
政略結婚。
そう言われれば、その通りなのだろう。
王命で決まった縁。
互いに恋を育てたわけでもない。
それでも。
(政略でも、俺は運が良かったと思ってる)
この人が相手だった。
それだけで十分だった。
口づけを終え、 祝福の拍手が教会を包む。
アルノルトは誰にも気付かれないよう、
そっとヴィオラの手を握った。
冷たい指先だった。
だからこそ、 心の中で静かに誓う。
(君を幸せにする)
たとえ今は、 この結婚を義務としか思っていなくても。
いつか必ず。
この人を笑顔にしてみせる。
誰よりも幸せにしてみせる。
それが、 アルノルト・フォン・シュタインの、
神にも告げない本当の誓いだった。
その夜。
寝室で、 純白のドレスを脱ぎ、
少しだけ緊張した表情で座るヴィオラを見た瞬間。
昼間、 必死に押し込めていた想いが溢れた。
「……綺麗だ」
震えるほど愛おしい。
やっと隣にいる。
やっと触れられる。
「俺は、今日という日をずっと待っていた」
彼女は政略結婚だと言った。
だからアルノルトは笑って答えた。
「政略でも、俺は運が良かったと思ってる」
翌朝。
目を覚ますと、 隣にはヴィオラがいた。
夢ではない。
昨夜の温もりが、 まだ腕の中に残っている。
思わず彼女の腕を掴み、 抱き寄せる。
「……どこへ行く」
再び腕の中へ収めると、
胸の奥から自然と言葉が漏れた。
「夢じゃなかったな」
「何がです」
「君を、俺のものにできたことが」
驚いたように目を見開くヴィオラ。
そんな彼女の髪を、
壊れ物に触れるように優しく撫でる。
「これから、ちゃんと大事にする。約束する」
その約束だけは。
どんな誓いよりも。
どんな勲章よりも。
アルノルトにとって、 生涯守り抜くと決めた、
たった一つの使命だった。
おはようございます٩(*´꒳`*)۶
本日もお立ち寄り頂きありがとうございます!
本日は5話投稿予定です。
①7:30~②8:30~③12:30~④17:30~⑤20:30~
ぜひ1話でも読んで頂けると嬉しいです。
投稿最後の5話目、
ヴィオラがアルノルトを喰べちゃうシーンです。
かなり濃厚かもしれません…
苦手な方はスキップを。
R15ギリギリかもしれません笑
R18バージョンを書こうと決意した今日です笑
もっと激しく書き上げますので、投稿したら
ぜひそちらも読んでくださいませ。
では、皆さま、本日もお付き合い下さいませ。
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頑張りのエネルギーになります!
ぜひ、よろしくお願い致します٩(๑>∀<๑)۶




