雨
予報とは違い、天気は雪にならなかった。やたらと小さな雨粒が窓の外を引きずられたかのように伸びて、そして消える。夏希のベッドの僅か先、それでも手の届かないところ。冷たくて、痛い、雨だった。
年を超えて、正月を過ぎて、それなのにまだ夏希は雪を見られずにいた。意識があるときに目にするのは雨ばかりで、天はそれを白濁させてはくれない。気付けば夏希は起きている時間のほとんどを、窓の外を見ることに費やすようになっていた。
「朝方の雪は、現在雨に変わっており……」
適当に点けたテレビは仙台駅前を映しながら、モニターのなかで天気を移ろわせている。あぁ、朝方にはまだ雨だったのに。それは夏希が起きるよりも早く、雨に変わってしまったのだ。静かな悔しさが波のように胸を覆った。
次に目を覚ました時にはもう夕方になっていた。寝すぎた、時計を見ればそう分かるのに、体はまだ睡眠を欲しているようだ。雨もとっくに止んだのか、曇天の下、アスファルトは薄い灰色に染まっている。
誰かが二月に変えた卓上カレンダー、読みかけの小説、看護師を呼ぶためのプラスチックのボタン。夏希の周りに広がるのはつまらなくて、ちっぽけで、窮屈な部屋だった。
窓には前よりもずっとやせてしまった自分が映る。そして例えそれから目を逸らしたとしても、視界にはいやに角張った体の随所が同じようにちらつくのだった。
思わず出た溜め息。最近はやたらとそればかりだ。
もううんざりだ、そうよく思う。




