真実の扉の前にて
私はサイモンに連れられて、王城の中を歩いていました。
ここはいつもとは違い、明確に立ち入りが制限されているような場所だとすぐに分かります。
王城の中でもこの区画はめったに人が近寄らないのか少し薄暗くなっていました。
サイモンは何も話さず、ただ静かに私の前を歩き続けています。
犯罪者の可能性があるのに、そんな心配などいらないくらい堂々と歩いていて不思議です。むしろ、あまりの沈黙に私の方が方に力が僅かに入り、緊張をしています。
それにしても、サイモンには秘密の通路や部屋を見つけてからというもの、お世話になっていたため、未だに今回のような裏切り行為があるなんて信じられません。
長い廊下を歩きながら私はふと疑問を感じます。
そういえば、レイバーとお師匠さまは見た目が似ているはずです。お師匠さまのメイクをしていたとはいえ、あれだけ瓜二つの二人を見て、驚きや何か察するものはなかったのでしょうか?
何だが今聞いておくべきな予感がするので、聞いてみましょうか。
「あの……そういえば、レイバーさんを見て何か思われましたか?……その、見た目とか……」
恐る恐る声を掛けてみると、サイモンは歩くペースも変えず、こちらを向くことなく、ただ、声だけがかえってきました。
「余計なことは話すなと仰せつかってるので、あまり長い話はできかねます。その上で申し上げますと、別に何も思いませんでした。」
ーー気にならなかったのですか?
あれだけ似ているのに? 少し似ていたなどの感想もないのでしょうか?
逆に私が困惑してしまいました。
「本当ですか? 見た目に違和感とか……」
そこまで言いかけたとき、サイモンはピタッと足を止めました。
「さあ、お話はここまでのようですよ」
目の前には大きな扉がありました。
この扉にはぐるぐると何重にも厳重に鎖が巻かれています。
そして、鎖に封をするように南京錠がかけてありました。
するとサイモンは自分が疑われ絶望的である素振りを一つも顔に出すことなく、普段通りの穏やかな笑みで私に振り向きました。
「さて、着きましたよ」
「ここですか?」
「ええ。さて、ここであなたは真実を知ってもらおうと思います」
「ただの扉ですが……」
「中に答えがあるのです。では、これをお渡しするのでご自分で好きなタイミングでお入りください」
サイモンはスッと何かを手渡してきました。
その手にあったのは鍵でした。
ここで、私はその鍵を見て、思わず自分の目を疑いました。だって……そこには星の装飾があったからです。
お師匠さまを攫った竜の首にあったあの紋章です。
これは……レイバーが見たと言っていた、例の鍵だと一瞬で分かりました。
まさか、こんな形で目にするなんて。
手が震えています。
つい、私は聞いてしまいました。
「……この鍵は誰のものですか?」
すると、サイモンは二コリと微笑むと、「さあ、誰でしょうね」と言いました。
この期に及んで口を割らないようです。
ですが、この鍵がこの扉の鍵であるということだけは分かります。それはすなわち、この中に入ればお師匠さまを攫った真相にもう一歩近づける可能性があるのです。もしかすると、中に鍵の持ち主がいるのかもしれません。
不穏でなりませんが、そんなの行く以外の選択肢がありません。
私は黙ってこの鍵を受け取りました。
怖いのか私の身体は少し冷え、手は震えていました。
震える手を落ち着かせるように、深く深呼吸をします。
そして……意を決して、私は鍵を回しました。
鍵は間違いなくこの場所の鍵だったようで、開きました。私は周りの鎖をゆっくりと外していきます。
最後……扉の取っ手に手をかけた所で、「お待ちください」と、サイモンが開けようとしている扉を少しだけ止めて言いました。
「本当に、本当に、真実を知ってしまうのですか?」
私は分かりません。
「なぜ、そんなに確認するのですか? あなたの罪が暴かれるのが嫌なのですか?」
するとサイモンは少し困った顔をしました。
「いいえ。私ではありません。あなたのことです。この扉の先に行くと、もう……」
サイモンはここまで言うと、黙りました。ただ、フッと軽く微笑むと、何故か納得した顔をしてみせてもきました。
「いいえ、あなたは大丈夫ですね。だって優秀だもの。だからここを通過する許可が出たのですから」
私には訳が分かりませんでした。何を言っているのでしょうか。
「あの……何を?」
「いいえ、これは私の独り言でした。忘れてください。さて、ではお入りください。ああ、そういえばここでの用事が終わったら、再び領主様の部屋に戻るようにとのことです。」
「分かりました。では後で領主様のお部屋に向かいますね」
「では、あなたにご武運を。」
サイモンは深々と頭を下げました。
最後の挨拶になるかのように、それはそれは、丁寧に。
さあ、ラストスパートです。




