犯人の追及
私は、領主の部屋に再び通されました。
レイバーのいた牢獄から出た後、離れた所で普段とは別の使用人に「領主様がお呼びだ」と声をかけられたからです。
目の前には黒髪の美しい男性が腰かけています。領主様です。
「で、レイバーとやらの話は聞けたのか?」
領主様は早速私に声を掛けました。なんとなくですが、そう聞く領主様の顔には少し焦りが見えました。一刻も早く、レイバーからの話を聞きたいようです。
ちょうど良いでしょう。私も早く報告した方がよいと思っていましたので。
「はい。聞けました。」
「それは何よりだ。何、君から進捗を早急に聞いておこうと思ってな。例の青年が処罰される前に、一刻も早く対処しなければならない」
なるほど。先ほど会ったばかりなのに、間髪おかずに呼び出すとはせっかちだと思いましたが、レイバーの罪が重くならないように配慮してくださっていたのですね。
それはとても僥倖です。このままではレイバーを失ってしうので、私としても有り難く思います。
「私はその青年に会ったことはないが、君と仲が良い時点で人となりは想像できる。おそらく、必要に駆られて罪を犯したのだろう」
ーーそのように考えてくださってたなんて。
「……さすがでございます」
まあ、ただ、会ったことがないというのは、嘘になるので罪悪感があります。
お茶会でお師匠さまに変装してあなたに会っていましたなんて口が裂けても言えません。私はにこやかに頷きました。
領主は平静を装うように、目の前にあった紅茶に口を付けました。
「どうだった」
優雅に紅茶を飲みながらも続きが気になるようで、領主の方が話を急かしてきました。
「その件ですが……やはり、サイモンが裏で手を引いているのは確実かと思います。」
私は、レイバーから聞いた話を領主に伝えました。
話を続けるうちに、どんどん領主の顔が険しくなっていくのが分かります。
「やはり、そうだったか……。」
「身近な者の裏切りはさぞお辛いかと思います。」
「まあな。だが、これもサイモンを制御できなかった私の罪だ。……仕方ない。ここまで来たのであれば、もう本人を問い詰めるしかないかもしれない」
そう言うと、領主はベルを大きく鳴らし、
「ここにサイモンを!」と呼びました。
「あ、あの! 早くないですか? 結論を急ぎすぎでは?」
「いや、膿は早く出すに限る。それに、君が”優秀である”のもすでに分かっている。”このシナリオを早く止める”方が合理的だ」
「とは言っても……」
私が、止めに入ろうとする間もなく、ドアがコンコンとノックされました。
「入れ」
そこには先ほど見たばかりのサイモンが立っていました。相も変わらず穏やかな笑みを浮かべています。
「お呼びですか?」
「ああ、呼んだ。さて、単刀直入に聞くが……お前、隠していることはないか?」
すると、サイモンは顔色一つ変えず穏やかに応えました。
「はて? いいえ。私が隠すことなどございません」
「いいや、お前は黙っていることがある。……隣領でのことを私が知らないと?」
すると、サイモンの口先が少しだけ下がったのを私は見逃しませんでした。
「やっぱり」
私がそう呟くと、サイモンが私の方を見ました。
「なる……ほど。フィリーさんがいるということは……そうでしたか。私を疑って調査させていたと、いうことですね」
私は黙ったまま頷きました。
「私が長年かけて築いた信頼をまぁ……いとも簡単に壊してくるのですね。でも、フィリーさんも薄情な方ですね。こんなにお優しくしたのに、私を疑うのですか?」
「依頼がありましたので……疑うのが仕事です」
「それはそれは……では、どういった依頼を?」
私は答えるべきか迷いましたが、領主が頷いたので、答えました。
「真実を確かめろと……」
すると、サイモンは少し穏やかでありながらもクスクスと笑いだしました。
「何がおかしいのですか?」
「いえ、浅はかだなと思いまして」
「あさはか?」
「いいでしょう。では、領主様。私はフィリーさんにだけ真実をお教えしようと思います。お見せしたいものがあるのです」
領主様は怪訝な顔をしました。
「フィリーにだけ?」
「はい。謎が多いようですので。それに、フィリーさんには真実を知るよう言ってあるのでしょう?」
すると、領主は大きなため息をつきました。
「ああそうだな。では、フィリー。真実を知ってきなさい。君は知る必要があるようだ」




