隔たれた再会
お待たせしました。ついにクライマックスに入っていきます。
領主から許可をもらい、私はレイバーに面会しに行きました。
レイバーは幽閉されていて、柵越しからでしか話せないそうです。
柵に隔たれた暗い部屋を覗くと、小さなベットの上で丸まっている姿が見えました。
「レイバー……さん?」
私がそっと声をかけると、レイバーはぎょっとした顔で顔を上げました。そして、寝転んでいたとは思えない速さで、ものの一瞬で私の所までやってきました。
「フィリー! ああ、無事だったんだね!」
レイバーは柵から身を乗り出します。
よかった、思ったよりは元気そうです。
「ええ、無事ではあります。ありますが……」
私はレイバーと会えて少し安心したのも束の間、同時になんだか怒りが出てきました。
「どういうことですか? 何をしているのですか! 心配したではありませんか! しばらくお会いしてきていないと思ったらこんな形で再開することになりますし!」
思いの丈をぶつけます。
すると、レイバーがは気まずそうに「あー……、いやその……」と目線を逸らしはじめました。
「どこから話せばいいのか……」
そう話すレイバーの顔は少しやつれていました。今日一日でこんなにやつれることはないと思うので、きっと領地に帰ってから何かあったのでしょう。
「何かを気にして帰ったと思えば……何もなかったとは言わせませんよ」
私は思いっきり睨みました。
「しかもあの手紙はなんですか?! 何を一人で突っ走っているのですか! 私を巻き込まないようにしたつもりですか?!」
レイバーは私の勢いに委縮しているようで、気まずそうな顔をずっとしています。私がしばらく睨んでいると、根負けしたのかレイバーが口を開きました。
「実は領地に戻ってから、僕は僕の一家や竜の真相について探りを入れていたんだ。そこで、重大なことを知ってしまって。つい……」
「つい。って……。」
私はため息をつきました。ついでやってしまうことではないのですよ。
「では、その真相とやらを私にもちろん教えてくださるのですよね?」
すると、レイバーは困ったような表情をして、「それは……も」と口籠ってしまいました。ハッキリとは返事が聞こえません。なんだか話しにくいのでしょうか?それとも……?
このレイバーの反応から、私は胸がきゅっと締め付けられるような感覚がしました。
でも、私はレイバーと会話を続けなければなりません。
「まず私は確認したいです。レイバーさん……あなたのことを引き続き信頼してもいいのですか? あなたはまだ仲間だと思っていてもいいのですか?」
私は思わず聞いてしまいました。
だって、ずっと気になっていたからです。
レイバーは一応、”仲間”のはずなのです。そう思っているのは私だけかもしれないという不安が未だぬぐえません。だってこんな再開をするなんて誰が思ったでしょう?
それに、以前あんな別れ方をしてしまい、少し心残りでもありました。信用したいけど信用できない不安定な形で別れてしまいましたし。
試すようなことを言い、自分でも意地悪だなと思いましたが、なんだが怒りと不安が先行して、思わず聞いてしまいました。私らしくないですね。
すると、レイバーはハッとしたような、何かを察して慌てました。
「もちろん! 僕が君を裏切るはずがない! 当たり前だよ! 信頼を得る努力はしてきたつもりだ」
レイバーはこれには迷うことなく返してくれました。少しだけホッとしていまいます。求めていた言葉を聞けて安心してしまう自分に、少し単純だなと皮肉を言ってしまいそうになります。
頭が熱いような怒りと胸の辺りが暖かいような安心と……いろんな感情が交差して、感情が忙しいです。
私のただならぬ様子にレイバーは「まぁ、行動と矛盾しているように見えるよね……」と呟きました。
すると、レイバーが話を切り替えるかのように、「と、ところで! どうして君がここに?」と聞いてきました。
そうでした、早く本題に移らないといけません。
「どうしたの?」
私が少し黙ったからか、レイバーが心配そうに顔を覗き込みました。
ふと、冷静さに欠けている気がして、私は深呼吸をして気持ちを切り替えました。普段どおりの口調に戻します。
「少し、今から言おうとしている内容をあなたに話していいのか迷っただけです」
「迷うようなことなのかい?」
「ええ。……なぜ、私がここに来れていると思いますか? しかも、本来なら厳重警戒されているような環境なのに、今は見張りの立ち合いすらのない状態で話せています」
レイバーはキョロキョロと周りを見渡します。
「言われてみればおかしいね」
と呟いたところで、レイバーはハッと何かを察しました。
「もしかして、僕と話をしろと誰か……ある程度の地位の人に言われた? もしかして……サイモン宰相に取り調べをしろと依頼された?」
さすが察しがいいですね。
「まあ、半分当たりで半分外れですね。……答えは、領主様です。」
「領主様?」
「それも、サイモン宰相には内密にとなっています」
「内密……? それじゃあまるでサイモン宰相には聞かれたくないみたいじゃないか」
と、そこまで言うと、再び何かに気づいて、驚いたような表情をしました。
「もしかして、領主様は何か極秘で調査をしている……?」
私は頷きました。
するとレイバーは、「本当かい?」と少し目を輝かせました。
ーーやはり、領主様の仮説は正しかったようです。
「私は”真実を知れ”と領主様に依頼を受けました。だから、何があったのか、事実をあなたに聞かなければならないのです。これは極秘の領主直々の依頼です」
私がそういうと、レイバーは嬉しいような、でも申し訳なさそうな複雑な表情を向けてきました。
「そうきたか……」
色々と思う所があるのは分かりますが、時間がありません。いつサイモン側の人間がここに来るかもわからないので、「いいから早く教えてください」と言いました。
レイバーは、「分かった」と頷きました。このような時、話が速くて助かります。
◇◇
周りに人がいないことを確かめると、レイバーは少し響きにくい小声で打ち明けはじめました。
「君と領地境で会った後、僕は隣の領地に帰ったんだ。そして、僕の一家が巻き込まれたこと、さらに厄介な状況になっているのを知ったんだ。僕は君に信用してもらいたいのもあって、一生懸命無実の証拠を探し回ったんだけど、調査の中で意外な結果になってね」
「何があったのです?」
「順に話そう。まず、僕の一家についてだ。僕が隣領の貴族で、以前家族に奇襲があったのは知っていただろう。その家族が竜の活動に加担していると、噂が流されていたのも知っているね。しかし、実際に帰って確認したところ、事実無根で、親父たちも完全に否定をしていた。むしろ、あらぬ噂を流されていて疲弊しているようだった。」
「良かった! ご家族は加担はしていなかったのですね」
少し安心しました。
「ああ、それが本当に救いだった。でも、だからこそ、疑問が浮かんだんだ。なぜ僕の家族にこんな噂が流れているのか?」
「そこが疑問ですよね。」
「僕はまず噂の出どころに迫ろうとした。ただ、噂が広まりすぎて、見当がつかない。だから、親父たちの周囲の人間関係を探ることにしたんだ。基本的に俺たちの家は奇襲された分、同情される場合が多い。逆に恨みを持っている方が少数になるので割り出しやすいとも受け取れる」
「それは人を絞りやすいですね」
「なので、試しに親父に”悪意を向けられたことはあるか?危害を他に加えられたことがあるか?”と質問をしてみた。すると……答えはノーだった。」
「人間関係は比較的良好だったのですね」
「ただ、ここからが問題だった」
「ここから?」
「僕は疑い深くてね。家族が気づいてないだけで密かに恨みがある奴らがいるかもしれないと仮定し、僕はさらに調査の範囲を広げてみた。そこで、実は……家族達から話は聞かなかったのだが、何回か危害を加えられたり、言い争いをしている光景を見たことがあるとの情報を別の者から聞いたんだ」
「まあ! では目撃情報があるのですか!? もしかして、ご子息であるレイバーさんに気を遣わせないように……」
「僕も最初はそう思ったんだ。だから、親父達に隠し事は無しだと問い詰めたんだが……様子がおかしくなってね」
「様子がおかしく……?」
「こう表現すれば、気づくところがあるんじゃないか?」
「表現って?」




