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サラリーマン、異世界で働く。  作者: 雨崎 王助
世界のハマダ編
96/123

サラリーマン、とうとう転職する。

鉱石祭の閉会式は昼前には終わったが、帰りの出発は明日朝だ。今から出発しても夜までに次の村に着かないし、護衛のハンターも元々今日までは休暇だ。


スミナ商会員達は帰りの馬車に積み込む交易品を買い漁る為に、朝から街へと出ている。


やる事の無い俺とハンナさん一家、それにガストンさんを加えた5名は昼から酒場で宴会だ。ガストンさんがやる事無いってのは何か違う気もするけど。


全てが終わり、脱力し切ったハンナさんはテーブルに突っ伏して顔だけこちらを向けている。余所の教育に口を出す気は無いが、横でメアリが真似しているので止めた方が良いのでは…。


「あー、終わったねぇ…。しかしウチの工房が優秀魔道具賞なんてねぇ…。」

「″最″優秀だったらもっと嬉しいんですけどね。」

「ヤマダくん、バカ言っちゃいけないよ。カジャ魔道具工房のは世紀の発見レベルなんだから反則だよ、反則。魔道具としてはウチが最優秀を貰った様なもんなんだから。」

顔を起こしてジョッキをあおったハンナさんの晴れやかな顔と、閉会式のリグリアさんのコメントからすると、実際はそういう事なんだろうな。


「あ、優秀魔道具賞といえば賞金を半分渡しておくね。150万クロンも貰っちゃったから、半分でも165万コルだよ。」

「えっ、ゲイルさんも居るから3等分じゃないんですか?」

そう問いかけた俺の肩に、ゲイルさんの手がそっと置かれた。


「ヤマダくん、ハンナだけじゃなくて僕も君には感謝しているんだ。鉱石祭に出るのは父さんが夢見てた事でもあるからね。だから、これは君が受け取って欲しい。本当は半分でも申し訳ないぐらいさ。」

「まあ、ゲイルさんがそう言うなら…。」


そう言ってゲイルさんから袋を受け取ると、俺の前にガストンさんも袋をドスンと置いた。まさか、このパターンは…。

「約束の特別手当てだ。」

ひゃっほう、ボーナスだぜ。


袋を開けると、前に貰った時と同じで300万コルが入っていた。

ガストンさんは何かこの額にこだわりとかがあったりするんだろうか。


「まさか優秀魔道具賞まで取るとは思わんかったが…。前から思っていたんだが、ヤマダ。お前、本格的にハンナの所に移ったらどうだ。お前の能力で普通の商会員をやらせておくのは正直勿体無いぞ。」

既に1年半を過ぎた異世界生活だが、トータル1年以上はハンナさんの所で仕事はしていたし、最低限の仕事はできるだろう。

電卓もどきがあれだけ売れたんだから、まだ何か地球製品のパチモンを作れそうな気もする。

転職も割と有りなんだろうか。


「おー、おいでおいで。今やウチはジテンを作っただけ叔父さんが買い取ってくれるんだから、1人雇うぐらい訳ないさ。ヤマダくんなら給料もスミナ商会より出すよ?なんたって、ハマダ魔道具工房の″マダ″の人だしね。」

うーん、給料も上がっちゃうかぁ…。

正直ハンナさんの所なら転職って感じもしないし、ガストンさんも勧めてくれているんだから、そうするか。


「分かりました。よろしくお願いします、ハンナ工房長。」

「おおっ。そんな簡単に決めてくれるんだ。細かい事は帰りの馬車でゆっくり決めようか。」

しかし、そうなると大きな問題が1つあるな。


「ガストンさん、家が見付かるまで寮を借りててもいいですかね?」

「あぁ、家か。そうだな…ヤマダ、お前結構金貯めてるんだろう。あの家買うか?」

「えっ、寮って買えるんですか?というか、いくらなんです?」

「まだ建てて6年ぐらいだが、お前にはこれからも儲けさせて貰うんだ。500万でいいぞ。」


「えっ、えっ?ちょっと待って下さい。」

今の寮費は4人で10日に2万コルだが、レイナさんの話を聞く限りでは他で探すと5,6万はする。

5万だとしても年に180万か、3年で元が取れちゃうな。

少なくともまだ10年ぐらいは住めそうだし、これはかなりお安くしてくれてるのでは…?


しかもだ。今、俺の手元には結構な金がある。

イナリア商会からの依頼で貰ったのが20万クロン、つまり44万コル。

鉱石祭の賞金が165万コル、そしてさっき貰ったボーナスが300万コル。

なんてこったい、計509万コルもあるじゃねーか。


「かっ、買います。」

こうして俺は転職と同時にマイホームを手に入れる事になったのだった。住居は変わらないのだが。

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