第6話「4回目の——またね。」
ピ……ピ……ッ…ピッ……ピッ——ピッ——
心電音のようなだけが耳に残る。
(僕の目覚ましってこんな音だったっけ?)
僕は目を開ける。
「——?どこだ…ここ…」
自分がいたのは…病室だった。
「いや…自分の部屋で寝てた筈…」
あぁ——そうか。これは夢なのか。
「だって僕は…明日の入隊式の準備をして…」
それから?
「家を出て…それから電車に…」
思わず言葉が詰まる。
「…乗ろう…と…」
そうだ。僕は家を出た…筈。
本当に?
——いや、それが夢だったのか?
「僕の頭がおかしいのか?」
僕は自分の頭に手をやる。
「布…?包帯?」
僕の頭には包帯が巻かれていた。
(怪我?いや…そんな記憶は…)
その時…僕の頭に、電車に轢かれる瞬間がくっきりと写った。
「…!僕は…電車に…轢かれて…!?」
いや…僕の体はそんなに重体では無いようだ。
体を見回して見ても、包帯はさほど巻かれては無い。
「じゃあ、あれは…?」
その時、僕の思考はそこで止まった。
(どこからが…夢なんだ…?)
分からず混乱していた、その時——
「おっと…目覚めたようだね。」
扉の方を振り返ると…白衣を着た男の医者が立っていた。
胸には…緑の…対策職員のバッチ。
「対策職員って事は…ここは…」
彼は安心したように頷く。
「よかった。そこら辺の記憶はちゃんとあるみたいだね。でも、一応説明はしておこう。ここは君の言う通り…病院じゃない。研究部門の治療施設だよ。まぁ…病院とさほど変わらないけど。」
でも…研究部門の治療施設って…
「…僕は別に腐神に巻き込まれてはいませんが…」
僕がそう言うと、彼は深刻そうな顔をした。
「…覚えている事を教えてくれるかい?」
僕は、自分の名前、年齢、住所を答えた。
彼はカルテを見ながら答えた。
「ふむ…自分に関する記憶は、ちゃんとしてるみたいだね。」
彼は安心したように頷く。
「…何で腐神に巻き込まれた記憶が無いんですか?」
僕がそう聞くと、彼は難しい顔をした。
「君の記憶が…書き換えられたんだ。…外側の膜……「スファエラ」を通り抜けたことでね」
「…じゃあ、…他の記憶も…」
「…記憶の改ざんは……腐神の中にいた時間が長いほど、進行する。」
彼は言葉を選ぶように続けた。
「記憶だけじゃない。性格や認識まで変わる場合もある」
一瞬、視線が逸れる。
「……完全に別人になるまで、平均で三ヶ月前後と言われている」
「じゃあ…僕は大体どれくらいの間…いたんですか?」
僕は答えが怖くなって、唾を呑んだ。
彼は少し視線を落とす。
「大体…2週間だね。」
…え?
「つ、つまり…2週間…飲まず食わずで…?」
「飲まず食わず?」
「はい。ご飯は食べてないと思います……どうしたんですか?」
「それが……本当だったら…まずいぞ…」
彼は焦ったように言う。
「ど、どうしたんですか?」
彼の視線が一瞬だけ逸れる。
「結論から言おう…君は、…汚染区域に入ったんだ。」




