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「バットエンド」  作者: ここはだれ?
4回目の——またね。
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第8話「4回目の——またね。」

…では、どうしてあなたはJCIに入ろうと考えたのですか?」


「…それは、この残された時間を何に使うべきかと考えたからです。」


退院してから2日後。JCIは腐神に巻き込まれた僕のために、すでに終わっていた面接試験を開始した。


「残った時間というのは、体が壊れるまでの時間…それで間違いないのですか?」


「はい、間違いないです」


「では、保護措置契約にサインする手もあったでしょう?なぜこちらを選んだのですか?」

面接官は、サインが書いてある登録確認書を僕に見せた。

「…もし…私が腐神に巻き込まれず、自分の体に残った時間を知っていたら、きっと、保護措置契約の方を選んでいました」

僕はさらに続ける。

「私は気づいたんです。この世は理不尽な事に。希望なんて…最初からない事に。」

「「神」なんていない事に」

一呼吸置く。

「…ですから私は…反抗してみたくなったんです。」

「神みたいに偉そうにしている…腐神と。それを受け入れている運命に。」

1拍間が落ちる。

「それは…影響による物ですか?それとも決意ですか?」


「それは…」

僕は息を呑む。

「…すでに腐神に影響を受けているんです。…生まれた時から。これは私の考えですが…決意は…影響からなる物だと思っています」


沈黙だけが積もってゆく。でも、空気が変わったのはわかる。

「ふむ…面白いですね」

試験管は紙を机に戻した。

「では、最後に1つ」

彼は初めて、僕の事を資料ではなく、個体として見た。

「もし、この戦いが。——あなたの物語が。理不尽で、希望のない運命に決められていたとしたら?」

一瞬、間が落ちる。

「私は…」


一呼吸置く。


「…たとえ栄光ではなくとも、綺麗ではなくても。忘れ去られたとしても」


一つしかない。



「足掻いて見せます。…バッドエンドでも、最後まで。」                   But end














「これが君のバッジです。受け取ってください。中には在隊証明書も同包されてあります」

僕はバッジが入った高そうな箱を受け取った。

「入隊式は終わってしまって…ちゃんとした場所で渡せなくて申し訳ありません…」


「いえいえ、大丈夫です」

僕は箱の透明になっている場所からバッジを覗いた。…バッジは灰色。訓練班の色だ。

「…私としては、あまり良い扱いでは…残った形見がバッジだけになってしまう可能性もありますから」

僕は箱を覗く手を止める。


面接に合格した僕は、在隊証明書とバッジを受け取る為に、中央本部の隊長室に来ていた。


目の前にいるのは、避難班隊長の霧島ことはさんだ。

全市民避難成功34回、大規模腐神市民生存率75%超2回、現場隊員生存率改善4回。

計40回もの勲章を受賞している人だ。…テレビで散々聞いたから覚えている。

「それで…初任務はいつになるんですか?」

僕がそう言うと彼女は何かを思い出したように言った。

「あ!任務と言えば…武器を支給しないといけませんね。ついてきてください」

彼女は椅子から立ち上がって扉へ向かった。

「ど…どこに行くんですか?」

開けた扉の外の廊下に僕の声が反響する。

彼女は一瞬だけ間を置いて、ガンケースを肩にかけた。

「……武器庫です」

武器。その言葉を聞くと、自分がJCIに入隊したことを再認識してしまう。

それだけ言って、彼女は歩き出した。

彼女は廊下の端にあるエレベーターまで歩くと、下ボタンを押した。

「………」


気まずい沈黙だけが積もっていく。


「…武器、とは、一体どんな物が?」

彼女は少し考えて言った。

「腐神に対抗するための武器といえど、レーザーライフルのようなSFじみた武器はありません。」

一拍、間を置く。

「…ですが、我々人類は人を殺す武器と言うものを数多く作ってきました。それが全て、ここにあります。」

人を殺す武器——その言葉が、やけに現実味を帯びて聞こえた。

エレベーターの、「チン」と言う乾いた音が、誰もいない廊下に響く。

彼女はエレベーターの中に入ると、7からF20まであるボタンの中から1番下のF20を押す。

「第一次世界大戦の物から最新のものまで。開発が打ち切りになってしまった銃までも」

扉が閉まる。

——ふわり、と。

一瞬だけ、体が浮いたような感覚。

「別にコレクションする目的ではありません。普通の銃は敵に効きません。なので、神秘の力によって底上げする必要がありました」

彼女は一呼吸置く。

「それにも相性があり、人それぞれです。なので、あらゆる選択肢を用意する必要がありました」


「武器…どうやって選べばいいんでしょうか?」


「しらみ潰しにやって行くしかないかと。ですが、物にも僅かながら神秘が宿ります。相性が良い物というのは引き合うものです。」

彼女は自分の銃に目をやる。

「気になった物があれば試して損はないですよ」


ゴウン——


エレベーターが減速していく。

内臓が下に引っ張られるような感覚。

低い振動が足元から伝わる。


「着きました」


チン


乾いた音が、扉の先にあるであろう部屋に響く。


扉が開いた瞬間——

鼻を刺すような、鉄の匂い。

「……ここが武器庫です」

僕は部屋に足を踏み入れる。靴越しでも床の冷たさが伝わってくる。

整然と並んだ銃。

奥が見えない。壁一面に広がるガンラック。

古い木製のものから、黒光りする近代的なものまで。

その全てが、静かにこちらを見ているようだった。

「…あれは…」


——視線の先。


一本の銃が、わずかに揺れた気がした。


気づけば、足が動いていた。

視線を外せないまま、ゆっくりとそこへ向かう。


銃を目の前にして、僕は冷や汗を垂らす。

(…触れても…いい…のか?)


カチャッ——

静かな空間に金属音だけが響く。

ジャキッ——

僕はボルトを引く。


「ヴェッテルリーヴイタリ M1887。 19世紀後半にイタリア軍で採用された軍用小銃。単発式から4発装填の弾倉式へと改修されたモデル」

霧島さんとは違う、明らかに低い声。


僕が振り向くと…そこにはタバコを吸っている無精髭の男が立っていた。

いつからいたのか…わからない。


「ボルト操作による装填を行うため連射性は低いが、堅牢な構造と確実な作動が特徴」

彼は淡々と銃の説明をすると、一息ついて続けた。

「…早いな。…まさかとは思ったが、人工的な核でも引かれ合う物があったとは、な」

彼は眉を上げる。……どうやら彼はこの状況が相当気に入らないらしい。

視線は、僕ではなく——銃に向いている。

「……紹介が遅れましたね」

その声に僕は振り返る。

いつの間にか、霧島さんがそこに立っていた。

「武器庫管理を担当している、榊 龍弥さんです」

彼は面倒臭そうに溜め息をつく。


「遅れたおまえに扱い方を教えてやる。こい」





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