休載のお知らせ+おまけ
これはランディが生徒会長選挙に出るより少し前の話……。つまり入学式が終わって間もなくのこと。
いつも通りのテラスに集まったランディ達であったが……
「そーいえば、ベティとエリリンって二人とも変な形の腕輪つけてるよね? 何で?」
……リヴィアが指差すのは、それぞれの左腕と右腕にある、黒色と銀色の特徴的な形の腕輪だ。魔石のついている飾り部分だけが飛び出た腕輪は、リヴィアの言葉通り「変な形」と言われてもおかしくない。
「ああ、これですか?」
黒い腕輪を擦るリズが、隣の席で男性陣と談笑中のランディをチラリと見た。
「大事な贈り物なんです」
微笑んだリズがエリーに「ね?」と同意を示すと、エリーは照れたように少し顔を背けた。
「お主の中にいる時に、ずっと付けておったからのぅ。今さら取ると違和感というか……」
モゴモゴと言い訳を口にするエリーだが、腕輪がついているのは、リズの左腕と違い右腕だ。遠慮がちに銀の腕輪を擦るエリーの横で、「そういえば」とセシリアも思い出したように手を打った。
「学院に戻ってきた時には付けていましたわ。始めはランドルフ様とリザの色を、あしらった物だと思っておりましたが」
腕輪を覗き込んだセシリアが「今は少し変わっておりますわね?」とエリーとリズを見比べた。
「はい。元々二つで一つの腕輪だったんですが……」
腕輪を触るリズが語るのは、エリーが身体を取り戻した後、分割してお互いの腕に収まったという話だ。
「その時、魔石も蒼と紅に別れたんですが――」
「あれ? でもアンタの方にも紅い魔石ついてるじゃない」
首を傾げるキャサリンの言う通り、リズの黒い腕輪にも紅い魔石が付いている。逆にエリーの銀の腕輪には、紅い魔石が二つだ。
「その、これは……」
恥ずかしそうに腕輪を隠すリズだが、エリーの腕輪を眺めていたセシリアが、「ランドルフ様の色ですわ」と目敏くエリーの腕輪にある紅い魔石の色が、少し違う事に気がついた。
「な゙――」
エリーが慌てて隠すがもう遅い。周りから見せろ見せろと言われ、リズとエリーが観念したのか、恥ずかしそうに腕輪を外して机の上に置いた。
「それぞれの色に、ランドルフ様の〝紅〟ですわ」
セシリアの言う通り、リズにはエリーの黒と自身の蒼、エリーにはリズの銀と自身の紅、それぞれお互いを表す腕輪に、ランディを示す紅い魔石がついているのだ。
「ランドルフ様からの贈り物と聞いていましたが……」
「デカ男が作ったの?」
まじまじと腕輪を覗き込む二人だが、ランディが作ったにしては、少々装飾がショボいことに気がついた。
「まだクラフトで出来ることも、少ない頃でしたから」
懐かしむリズが、自分の腕輪を取り、また腕に着けた。
「大事な三人の思い出なんです」
エリーは何も言わないが、それでも大事そうに腕輪を手に取り、自分の右腕へと戻している。
「でも魔石を増やしたのよね?」
首を傾げるキャサリンに「あと色も、ですわ」とセシリアが同意するように頷いた。
「それは……」
恥ずかしそうに、リズがランディを盗み見る。未だに男性陣と盛り上がるランディは、こちらの会話に気づいていない。
「ランディが増やしてくれたんです。それぞれの色を――」
「コレで一緒だ、とな」
ため息混じりだが、エリーも微笑んで自分の腕輪を擦った。
二人が着けるにあたって、折角なら造形を整えようか、という提案がランディから出たのだが、二人がそれを拒んだのだ。
この形だからいいのだ、と。そこでランディが出したのが、それぞれの色をあしらうアレンジだ。
そうして生まれた腕輪が、今も二人の腕に輝いている。華美な装飾は一切ない、不思議な形状の腕輪。もちろん合わせて一つにする事も出来る。
それは三人の始まりであり、今まで歩んできた軌跡でもある。だから――
「これからもこの形で、歩いて行きたいんです。三人で」
リズがそう呟いて、腕輪を擦った時――
「何か盛り上がってんな」
ランディが隣の席から声をかけた。
「ランドルフ様、今は淑女の会話中ですわよ」
「ほんっとデリカシーないわね」
「ランドル、アウトだよー」
セシリアとキャサリン、そしてリリヴィアに撃退されたランディが「ンだよ」と口を尖らせた。
その反応にリズとエリーが顔を見合わせ微笑んだ。
「内緒です」
「そうじゃな。お主には聞かせられん」
二人にまでそう言われるランディの肩を、ルークが「馬鹿め」と叩いて悪い顔で笑う。
「うるせー。テメーはすっこんでろ」
そうしてまた始まる男性陣の盛り上がりに、リズ達は誰ともなく顔を見合わせ笑い声をあげた。
暖かな日差しの中、今日も二人の腕には、あの日から二人を見守ってきた、ランディの優しさが輝いている――。
一巻の制作作業中に、こんなプレゼントもあったよね。と思い出したので書いたものです。
ぜひここまで辿り着いた方々も、「なつかしい」と思い出していただけると幸いです。





