本日休載のおまけ
申し訳ないとおもいつつ、休載とおまけです。ランディと、ルーク二人だけの会話の続き、本編に入らなかったものをどうぞ。
「にしてもエレメントか……。懐かしいな」
微笑んで空を見上げるランディに、「嫌な思い出ばかりだけどな」とルークが不満そうな顔を見せた。
「何でよ?」
「何で、だぁ? ほぼお前のせいだろうが」
眉を寄せたルークが、話すのは始めてエレメントと揉めた時の話だ。
幼い頃、探検隊と称して魔の森を散策していた時、風のエレメントと遭遇したのだ。ハリスン始め、アーベルやガルハルトも「逃げよう」と尻込みする中、ランディだけが「よし、次はアイツだ」と突っ込んでいったのだ。
「あの時は最悪だったぜ」
思い出すようなルークに、「そんなこともあったな」とランディが笑った。
「笑い事じゃねえからな。風刃、風弾の乱舞に、逃げても逃げても追いかけてくるしよ」
顔をしかめたルークが、あの時は死ぬかと思ったと大きくため息をついた。
「そうだ……思い出した」
「思い出したか。馬鹿が」
呆れ顔のルークに、「お前ら……」とランディがルークに顔を寄せた。
「あの時俺に『この馬鹿』だとか『こいつを生贄に――』だとか、めちゃくちゃ言ってただろ」
睨みつけるようなランディに、「今更ぁ?」とルークが素っ頓狂な声を上げた。大通りに響く声に、周囲の人々から視線が集まり、ルークが恥ずかしそうに咳払いをした。
「そりゃ、言われるだろ。あんだけ『止めとこう』っていうのに、突っ込むんだからよ」
背もたれに身体を預け、空を見上げたルークが「まあ……あれに限った話じゃねえけど」と大きなため息をついた。
「でもそのお陰で強くなったじゃーか」
同じように背もたれに身体を預けたランディが、「ほら、だってあの時も――」と語りだすのは、それから数年後の収穫祭の話だ。
皆が囲む為の大きな篝火の周りに、火のエレメントが現れたのだ。
全員が驚き、家に引きこもろうかというその時、ランディ率いる探検隊が火のエレメントをブチのめしたのだ。
「あの時俺達は英雄だったろ?」
「ガルの親父に『無茶しやがって』ってぶん殴られなきゃな」
ため息をつくルークの脳裏には、広場に高々と上がる火柱と、それに照らされる鬼のような顔をした男が浮かんでいる。ガルハルトに似た、筋骨隆々の大男は、ランディ達が幼い頃の、騎士隊副長を務めていた男でもある。
「あのオッサンな……。そういや、ブラウベルグで、四聖もどきを一撃で倒したらしいぜ」
「マジかよ。相手に同情するわ」
ルークの苦笑いに、ランディも「怖えオッサンだよな」と苦笑いを返した。
「絶対親父達の世代も、エレメント狩りしてたよな」
「そりゃしてんだろ。あの時、『お前らにはまだ早い』って言ってたし」
「まあそれが今じゃ、新兵訓練の一環なんだがな」
「どこかの馬鹿のせいでな」
笑うルークに「お陰、と言え」とランディも笑い声を上げて空を見上げた。
しばし暮れゆく空を眺めていたランディが、「フフっ」と笑い口を開いた。
「まさかあのエレメントを捕獲する事になるとはな――」
空を見上げ目を細めたランディが、あの時の自分達に聞かせても信じてもらえないだろうな、と笑いながら呟いた。
「いや、信じるだろ」
隣で眉を寄せ、ランディを覗き込むルークに、「……何でよ?」とランディがルークに視線を合わせた。
「ガキの頃から、突っ込む馬鹿が成長したんだぞ。『次は捕まえようぜ』って言っても、誰も驚かねえし、信じるぞ」
真剣な顔のルークに、「ンなこたぁねーだろ」とランディが眉を寄せるのだが、ルークは「いいや、信じる」と真剣なまま首を振る。
「ヴィクトールの住民全員がな」
そう言って笑い飛ばすルークに、「失礼な奴らだな」とランディも言葉とは裏腹にまた笑顔を見せた。
そうして久しぶりに交わされた二人だけの会話は、その後ルークとセシリアの最近の仲などにも発展するのだが、それはまた別の話。





