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【書籍1巻発売中】モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが〜ゲーム本編無視で、好き勝手楽しみます〜(旧サブタイトル:ゲーム本編とか知らないし、好き勝手やります)  作者: キー太郎
第六章 新年度は出会いがいっぱい

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第292話 選挙? 明日から頑張るよ

 ランディ達が校舎に特大ポスターを映し出した翌日、学院は朝からその話題で持ち切りであった。


 映し出された特大ランディのインパクトの大きさもだが、何より彼らが話題にしているのは、ランディを始めとしたメンバーが全員生き生きとしていた事だ。


 謎の儀式かと思われた巨大レンズ作成から、映像投射まで、一部始終を多くの生徒が見ていたからこそ、ランディ達が心の底から楽しんでいるというのが伝わったのだろう。


 もちろんランディが一人、ガルド、バルク教官に捕まったところまでが、セットの話題である。


 生徒会長立候補者が、推薦人に咎められる……。ともすれば、推薦取り消しか、と思われる事態であるが、ランディの名前が告示版から消えていないのだから、話題の熱は増すばかりだ。


 そんな昨日までとは打って変わった視線の中、当のランディ本人はと言うと……


「……絶対許さん」


 ……昨日やらかしたメンバー、いや主にキャサリンとセシリアを前に盛大に顔を顰めていた。


「お前らが変な勘違いするから」


 口を尖らせるランディが、「大変だったんだぞ」とブツブツ呟いている。セシリアやキャサリンが勘違いしたせいで、【暗潮】まで巻き込む羽目になった。その誤解を解くのにランディは苦労した。


 なんせ誤解を解かねば、ブラウベルグ領から恐ろしい二人が飛んでくる未来しかないからだ。


「このムッツリ令嬢どもめ」


 鼻を鳴らすランディに「ランディ」とリズが止めようとするのだが、流石にこの発言はキャサリンとセシリアも聞き流せなかったようで……


「誰がムッツリ令嬢よ!」

「そうですわ! 訂正してくださいまし!」


 赤い顔で盛大に眉を寄せ、机を乗り越えんが勢いでランディを睨みつけた。いつも以上の剣幕の二人だが、ランディは「本当のことだろ」とニヤリと笑うだけだ。それどころか、


「にしてもルークもレオンも良かったな」


 とセシリアとキャサリンを見守る、苦笑いのルークとレオンへ悪い顔で話題を振った。その笑顔と言葉の意味にピンと来なかった二人が、首を傾げる。


「ちゃんと知識はあるからよ。その時が来たら、スムーズだぜ」


 今日一番の悪い顔のランディに、四人が同時に「な゙――」と顔を赤くし、リズとエリーが「ああ……」「阿呆め」と呆れた顔で空を仰いだ。


 ルーク達は顔を見合わせ、赤い顔を更に赤く染めていく。そんな四人を前に、ランディのニヤニヤは止まらない。


「おやおやおやぁ。君たちは一体何を想像したのかなー?」


 ニヤニヤと煽るようなランディの顔に、「こンのゴリランディ!」と赤い顔のルークが拳を振り抜いた。


「フッ、いい風だ」


 拳を躱し、ドヤ顔を見せるランディに、ルークがまた拳を振り抜く。

 椅子に座ったまま拳を出し続けるルークと、同じく椅子に座ったままそれを躱すランディ。


 焦りすぎて珍しく大ぶりのルークの拳に、「無駄だ」とランディが高らかに笑い声を上げる中、「一体お前達は何をしているんだ」とリヴィアとウェイン、そしてコリーとアナベルを引き連れたユリウスが現れた。


「遅かったな」

「少々授業が食い込んでしまってな」


 肩を竦めるユリウスが、歴史の授業終わりにエドガーが王族の正当性を説いて、長引いた事を話した。


「そりゃまた……」


 苦笑いを浮かべるランディは、心の底からクラス分けが違って良かったと思っている。


 学院は学園時代と基本的に同じシステムで運営されている。午前中は必須科目。そしてその必須科目は、各学年をランダムに組分けして、それぞれの組で決められたカリキュラムをこなす……。ようは日本の学校で見る、クラス毎に授業が違うシステムだ。


 ちなみにランディとリズ、エリーが同じクラス。セシリアとキャサリンが同じクラス。ユリウス、リヴィア、ウェインが同じクラスである。


 もちろんコリーやアナベル、そして今年度から学院生となったレオンは二年と学年まで違うので、コリー達が一緒にいるのは珍しいのだが。


「ランドルフ先輩」

「き、昨日はすみませんでした」


 開口一番頭を下げてきた二人は、ランディに謝ろうとこちらに向かっている時に、ユリウス達と合流した形だ。


「いいよ。お前らは止めてくれてたのに、聞かなかった俺が悪いからな」


 笑顔で「まあ座れって」と椅子を勧めるランディに、コリーとアナベルが顔を輝かせ、椅子に腰掛けた。


「ちなみに、俺も止めたからな」


 ため息混じりのユリウスに「あ、馬鹿」とルークが呟くのだがもう遅い。


「止めた、だぁ? お前が?」


 眉を寄せるランディが、ユリウスを下から覗き込んだ。


「止めるんなら、もっとデケェ声で言え。ぶん殴るぞ」


 ルークの予想通りの返しに、ユリウスの頬が「なぜだ……」とヒクヒク動く。


「なんとなく、だ」

「なんとなく、か……」


 肩を落としたユリウスが、大きくため息をついて椅子を引いて腰掛けた。


「それで?」


 話題を切り替えようと、ユリウスが皆を見回した。


「結局お前たちは一体何をしていたんだ?」


 呆れ顔のユリウスに、「昨日の事でな」とランディが悪い顔でセシリア達を見た。


「なるほど」


 赤い顔のセシリアやキャサリン、そして怒るルークと悪い顔のランディ。それらから状況を察したユリウスが、「程々にしておけよ」と溜息をついて指先で額を押さえながら首を振った。


 そんな中、一人困惑しているのはウェインだ。


「なんだよ。一体何があったんだ?」


 寮生なので、あの後カフェにもよらず、一人寮へと帰ったウェインは昨日の騒動を知らないのだ。


 そんなウェインに「教えてやろう」とランディが昨日の一部始終を悪い顔で話しだしたのだが……


「それ、お前がアウトじゃね?」


 ……首を傾げるウェインに、「なんで?」とランディが眉を寄せた。


「だって、エリザベス嬢やエレオノーラ嬢の……その脇腹を触ったんだろ? くすぐって二人が動いた時にその――」


 頬を赤らめたウェインが、恥ずかしそうにリズとエリーの胸元を見て、直ぐに目を逸らした。その行動だけで、ウェインの言わんとすることを、その場の全員が理解し、ランディ達三人へ視線を向けるのだが……


 そこには、顔を赤くして俯く三人の姿があった。


「てンめぇ! このスケベゴリラ!」

「やっぱアウトじゃないのよ!」

「破廉恥ですわ!」

「く、くっそー! 羨ましすぎんだろ!」


 口々にランディを罵り、ルークとウェインに至っては、ランディをポカポカと殴りつける始末だ。


「ちょ、いやまて。不可抗力で――」

「触ってんじゃねえか!」

「お前マジで何なんだよ!」


 火に油を注ぐ発言に、ルークとウェインが更にヒートアップする。もはや昨日の話題すら掻っ攫いそうな、勢いの集団に、中庭にいる全生徒の視線が集中していた。


 昨日までとは違う、どこか羨むような視線は、今この瞬間を楽しんでいるランディ達への羨望の眼差しだろう。特に平民や下位貴族の生徒達からは、その視線が顕著に注がれている。


 もちろんランディ達も視線の変化には気がついているが、内心驚きのほうが大きかったりしている。


 なんせ好き勝手やっていたら、周りからの視線が好転したのだから。


 エドガーやダリオがどんな活動をしているかすら知らないので、その変化の理由にある程度の心当たりはあれど、信じられない方が強いのだ。


 そうして好奇の視線に晒されながら、一頻り殴られたランディが、「ひどい目にあったぜ」と机に突っ伏したまま呟いた。


「告白もせずに、あんな事をするからですわ」


 口を尖らせるセシリアに「まだ無理なんだよ」とランディが鼻にシワを寄せた。


「閣下と約束してるからな。新しい街――ヴェリネアの発展に目処がついてからって。リズに言えねーなら、エリーにも言ったら駄目だろ」


 もう殆ど告白のようなものなのだが、それをランディが認める事はない。


「ならば今日もコピー機の試作を詰めるんですの?」


 首を傾げるセシリアに「そうだなー」とランディが椅子を揺らしながら青空を見上げた。実際まだまだ気になる事はある。


 例えばレンズとして利用している幻屈晶だ。効果に不満はないが、昔は魔力の適正を調べる道具の要でありながら、それが正確ではなかったとされているらしい。それが今後どんな影響を与えるか、そしてなぜ正確でなかったか。それを調査しないと、完全にゴーサインは出せない。


 考えを纏めるランディの視線は、青空を通り過ぎ、逆さまの中庭へと向けられた。そこにいるのは、制服に身を包んだ生徒達だ。


 同じ制服。コピー……部数を絞るとは言え、やはり数は必要だ。


 つまりもう一つの懸念点は――


「やあ、昨日ぶりだね」


 ――ランディの視界に、逆さまのノアとエマが飛び込んできた。白衣姿ではないノアは、なかなか貴重な絵面だ。


「よぉ。昨日は世話になったな」


 逆さのまま笑うランディに、ノアが「楽しかったよ」と笑みを見せた。


「久しぶりに魔道具研究会っぽい活動だったなー」


 恍惚としたノアの表情に、「そりゃよかった」とランディが椅子を起こして、二人へ身体を向けた。


「今日はどうするんだい? ついに写光凹板に取り掛かるかい?」


 首を傾げるノアが、昨日の騒動を聞きつけて、今日の研究会は最近休みがちだった生徒も来そうだと教えてくれた。人数が増えればその分色々と実験が出来る。それが分かっただけでも、今日も魔道具研究会へ顔を出す理由になる、とランディは力強く頷いた。


「よっしゃ。気になる事と写光凹板と、同時にやっちまうか」


「選挙活動はしないんですのね」


 呆れるセシリアに、「いいんだよ」とランディが笑い、今日も選挙とは全く関係ない実験へと繰り出すことが確定したわけだが……。


 この魔道具研究会訪問とランディの写光凹板への構想が、最終的にランディの選挙活動――というなのナニカ――に繋がるとは、この場の誰も想像すらしていなかった。

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